2013年12月31日火曜日

「名著で読む世界史」渡部昇一

紀元前から、第2次世界大戦前までの世界史を知るための「名著」が紹介されている。ある程度の歴史の知識がないとついていくのにハードルが高いと思われる(私にもハードルが高かった…)。
日本人の著作としては、本人の著作の他に「ローマ人の物語」(塩野七生著)が紹介されている。


「偏頗(へんぱ)な歴史家」という表現がでてくる。(恥ずかしながら、「偏頗」という言葉の存在を知りませんでした。)歴史を記述する上では、事実を忠実に記述するだけでは歴史の本質的な部分はわからない。だから、公平で中立な立場ではなく、どれかの立場に肩入れした「偏頗」である必要があると述べている。
ビジネスでも「ストーリー」で語る重要性が注目されている。歴史も、何らかの「立場」で語られたほうが、その当時の人間の情動を理解できるのだろう。だから偏頗な歴史家の著作として、「イングランド史」(マコーリー著)は面白いと述べている。


第2次世界大戦での敗戦後の軍事裁判では、裁いたほうが行き過ぎでなかったか?といったことが著者の考えとして述べられている部分がある。理由の一つとしては、アメリカに対しては「アメリカは中世がなかったから騎士道がない。(=だから戦争でやられた分に対しては情け容赦なく報復するような宗教戦争の様相を呈する)」と述べている。
「中世がなかった」ことは、紹介されている「アメリカ史」(チェスタトン著)の記述と思われる。しかし、「騎士道がない」という指摘は、著者の考え(著者のアメリカ嫌悪の表れ?)であろう。


世界経済をユダヤ人が動かしていることを知る上で、「The Jews」(べロック著)は興味深い。書かれた1922年の時点で、その後のユダヤ人が世界経済を支配することを「予言」した本として位置づけられるということである。


歴史をみるときには古いほうから現代へ向かっていくのがオーソドックスだとすると、世界史を振り返る際には紀元前のかなり前からになる。なじみのない部分から進めていくよりも、見方を変えて、現代から遡ってみていくほうがとっつきやすいかもしれない。

2013年12月28日土曜日

「ノマドと社畜」谷本真由美


「ノマド」はいわずと知れた「ノマドワーカー」のことで、例えば、プロのブロガーがよく知られた例である。彼らはパソコンとネット環境さえあれば、物理的に固定された場所(事務所)とは関係なく、遊牧民のごとくあちこちで仕事ができる。
こうしたノマドが人気となっている風潮に対して、著者は、「現実はそれほど甘いものではない」ことを述べている。

ノマドの基本となるのは、その人のプロとしての技量であり、あちこちで自由に働くという意味で、フリーランサー(自営業)となんら変わりがない指摘はもっともである。で、その世界は例えるならば宮大工や畳職人の世界と述べている。いわゆる「職人」である。

ノマドになりたい人がやるべきこととして、以下の4点が挙げられている。

  1. 実際にフリーランサーとして5年や10年働いているひとに話を聞いて実態を知る
  2. フリーランサーとして必要なスキルや技能を探して身につける
  3. フリーランサーとして働くための基礎知識を身につける
  4. 英語を身につける

「4.英語を身につける」ことを勧める理由(自分を差別化できる.サービスや商品を世界中に売り込むことができる.日本以外で働ける.)を挙げているが、これらの理由はいまさら言われるまでもないだろう。それだけ読者のレベルが低いと考えているのだろうか?あるいは著者がこれらの英語を身につける理由を説明しないとならないレベルの若者と接してきた経験からだろうか。


ノマドあるいはフリーランサーで生きて行く世界は、実力勝負の厳しい世界である。しかも、地球上のどこであっても闘える能力が必要である。以前に紹介した「10年後に食える仕事食えない仕事」の分類のなかの「無国籍ジャングル」と同じだ。

「社畜」については、特に日本特有の雇用形態と欧米(ここでは著者の詳しい英国の状況)と比較し、ノマドの対極にあるものとして挙げている。日本企業では、通常は職務の範囲の細かい契約がない(少なくとも自分の勤務先ではないし、大多数がそうだと思う)。だから、付き合いで残業したり、人の仕事を手伝うことが暗黙のうちに要求されたりし、なんとなく頑張ることが評価されていたりする。もちろん、こうした業務範囲の「あいまいさ」が、過去の日本経済の発展を支えてきたことも否めない。ただし、終身雇用や年功序列といった旧来の制度があったからこそ成り立っていたと思われる。
本書でも「ノマド的な社畜であれ」と言われるように、仮に現在が社畜的なサラリーマンであっても、いつでもノマドとして飛び出していける準備をするのは現実的な対応であろう。ブラック企業ではまずいが、会社で無茶苦茶なことがあったとしても、それで安い給料しかもらえないと考えずに、お金をもらって貴重な経験を得ているいう見方もできる。また、やり方によっては上述した「ノマドになりたい人がやるべきこと」の4つのうちの3つぐらいは社畜としてもできるかもしれない。

2013年12月22日日曜日

"Unbroken Connection" Angela Morrison

以前に読んだ小説(Taken by Storm)の続編です。

「続編」のよい点は、同じ登場人物に関しては、それらの情報が既に把握されているので内容を追いやすい点でしょう。

Michaelはタイでダイビングインストラクターとして働き、Leesieはアメリカで大学へ進学し離ればなれとなった2人の関係を追った展開となっています。
Michaelがタイでの浮気の嫌疑をかけられるのですが、その証拠としてLeesieから言われたのが、第3者のブログに書かれた内容と写真である点は、ネットの時代だからこそ起こりうる展開でしょう。その人物が"blogospherically huge"だったから世間にバレバレも同然だったのかと。
ネットの時代となり、物理的に離れていても気楽に連絡がとれる状況は、明らかに現代モノの小説の構成に影響を与えているでしょう。さらに、ネット時代の特徴として、個人の情報を瞬く間に世界へ発信できることも挙げられます。

Leesieが自動車事故に巻き込まれ、一命を取りとめ、さらにそこから話が展開することを示唆しておしまいとなってます。事故後の入院の描写がかなり詳しいと思ったら、どうやら、著者の実体験を元となっているみたいです。あとがきに書いてました。

カテゴリーとしては恋愛ものですが、ストーリーとしてはちょっと重い気がします。


‐‐‐単語、表現メモ‐‐‐
([ ]内のNoはキンドルでのページ)
■She jabs a finger into my chest.[3045]
「人差し指で激しくこづく」 相手を激しく非難するしぐさ。

■I take in the scene.[3621]
ここでは「見物に行く」の意味でしょう。他の意味もあります。 

■Who knew she was blogospherically huge? Thousands and thousands of followers?[3823]
blogosphere(ブログ圏)とは、全てのブログとそのつながりを包含する総称であるとのこと。blog+sphereの造語。余談ですが、ネットワークの住民はnetizen(network+citizen)ですね。

2013年12月15日日曜日

「オンライン英会話の教科書」 嬉野克也

 「スカイプ英会話」に関して、あまり多くを語る必要もないと思います。
ただ、これから始めてみたいと思う人でやり方がよくわからない人にとって役立つ情報が本書の7割程度をしめています。
「英会話トークスクリプト」として、こんな時はこう言えばよいという文例が紹介されてます。決まり切った言い方なので、スカイプ英会話を始めることに抵抗のある人には役立つでしょう。
 単に授業を流すのではなく、有効に活用するために、レッスンで学んだ単語や表現を使って自分のシチュエーションに置き換えて英作文し、それを暗誦する方法を挙げています。ポイントは、「自分のシチュエーションに置き換えて」という点でしょう。で、そのシチュエーションを定義するのは、英語学習の「目標」だと考えられます。


「目標設定」の重要に関しては、本書全体で触れられています。
長期の目標を設定して、それに向かって、中期、短期の目標を設定することは冒頭に述べられてます。この点は英語学習のみならず、何かをやる際の普遍的なやり方と言えるでしょうが。

カジュアルな話し方とするのかビジネスに使うフォーマルな話し方とするのか、目標によって違ってくきます。ビジネスで英語を使うことを想定しているならば、最初からそれに合った話し方で学習しようと述べています。固い言い方もフランクな言い方も使い分けることができるのが理想ですが、上級者レベルでしょうね。

スカイプのレッスンで、それぞれのレッスンでも、目標を決めておくのが単に流されないためのポイントだとも述べています。


 英語での独り言や、妄想英会話が、ネットに頼らなくてもどこでもできる方法として紹介されています。目に映るものを英語で表現するトレーニング法は、私の記憶が正しければ、大前研一氏がすでに紹介していたと思います。例えば通勤電車で車窓から見える景色、あるいは中吊りの内容を、英語で片っ端から表現してみる(=その度に頭のなかでつぶやく)英語学習法です。


単なる「英語学習法マニア」になっては本末転倒ですが、「英語学習法」を知る上では面白い本だと思います。

2013年12月8日日曜日

「1泊4980円のスーパーホテルがなぜ「顧客満足度」日本一になれたのか?」 山本 梁介 

以前にスーパーホテルのことを書きました。
「スーパーホテル」に滞在して、人件費のことを考える
そこの会長の本をようやく読みました。

成功の秘訣は、別の言葉で表現すれば「選択と集中」ですね。
「100人の客のうち1人しか困らないようなサービスは切り捨てる」考えから、部屋に電話がないとか、冷蔵庫が空とかにしているみたいです。だからこそ、低料金を実現しているのだと。


マニュアルに基づいたサービスを超越した満足を提供するという企業理念は、ホテルが単に「宿泊する場所」を提供する場ではないことを意味していると思います。ホテルのようなサービス業であれば、人間である客と直接向き合うので、「マニュアル」だけでの対応に限界があるのは容易に想像できます。(対照的に、単純な製造現場であれば、マニュアルでカバーできる範囲は広くなるでしょう。)

マニュアルを超えたところに対応するためには、感性と人間性が重要であるとの考えから、スタッフの「自分磨き」を支援している点は独自であると感じました。読書を推奨しており、読書レポートのを提出すれば書籍代が支給される制度があるようです。ホテルに来て最初に接するのはフロントですから、従業員の品位はホテルの品質のひとつとして重要でしょう。しかも、品位は一朝一夕で上げられるようなものではないです。


スーパーホテルのことの他に、本人のこれまでのビジネスの成功と失敗や、逸話が語られています。そこで触れられている「先義後利」の思想は、ビジネス書ではよく語られていますが、それを端的に表現した著者の父親の言葉はうまいと思いました。
「泥棒はなあ、金を盗もうとするから人から逃げられる。それなのに、お坊さんは托鉢で歩いているだけで、人がお金をくれる。人として正しいことをしていれば、お金は自然についてくるということや」
違う口から同じような言葉が語られるということは、商売における真理(=利益を優先して人の道をふみはずしてはならないし、そんなやり方は成功しない)が語られている証でしょう。

"Taken by Storm" Angela Morrison

kindleで読んだペーパーバックスについてです。キンドルでは、わからない単語をタッチするとそのまま英和辞書で意味を参照できるのですが、読む速度が遅くなってしまします。なので、最近では、わからない単語はいったんハイライトにしておいて後で意味を調べる方式にしています。短所としては内容がざっくりとしかわからない点でしょうか。でも、読むリズムはよくなります。

主人公のMichealは悪天候の際のダイビングで両親を失います。そこから生き残った彼は、トラウマを引きずりつつも、ガールフレンドのLeesieとの関係性を進めていくのですが・・・といったあらすじです(このあらすじの記述の正確性は保証できませんがw。)LeesieはMichealのキスのテクにハマります。そのあたりの描写が若干大人向けですが、おおよそ健全な内容です。

この小説の面白い点は、その構成にあります。話の流れの基本はDivelog(潜水の記録)のコメントとして、日記風に語られています。そのDivelogの合間に、チャットのログが挿入されています。小説といえども、個人の日記とチャットのログを読むような構成です。口語的な表現を学ぶにはよい教材ではないかと思います。

Michealはタイへ渡ってダイビングインストラクターの仕事に就き、Leesieは大学へ進学するところで話は終わります。続編(Unbroken Connection)が出ているので、引き続きそちらを読む予定です。



‐‐‐単語、表現メモ‐‐‐
([ ]内のNoはキンドルでのページ)
■Toast:大変な難局にある人
If you bring it up, you're toast. Try to get him to talk, though. [No.786]
自然に訳すると次のような感じですかね。
「そんな話をしたら、あなた大変なことになるわよ。でも彼に話させるようにしてみたら。」

■knot:(胃・のどなどの)締め付けられる感じ
a knot forms in my throat that I can barely speak around[No.1141]

2013年12月1日日曜日

「ジャングルで乾杯!」 林美恵子

副題(-医者も結婚も辞めてアマゾンで暮らす-)とあるように、医者を辞めてアマゾンに移り住んだ点が、よくある海外移住(というか逃避)ものとは異なっています。

当初、アマゾンに来てお金もなく、食べるのにも困り、強盗の気持ちがよくわかったとか。熱帯であれば、食には困らないという思い込みが私にはありましたが、意外でした。あるいは、住んでいたのが都市部だったからなのかもしれません。

「お金があるうちに必要なものを買ってしまえ、食べ物がなくなったらその時に考えよう」という、現地の考えはラテン的と言えるでしょう。一方で、ブラジルの場合にはインフレという要素も大きいと思われます。現金の価値がだんだん目減りするのがわかってれば、今、現物にするのは理にかなっています。

現地の人間関係や現地人の考え方への苦労もつづられています。一言で言うと、「お前のは俺のもの、俺のものは俺のもの」と表現できるのではないでしょうか。

日本の生活がいやになって、抜け出したかったのであれば、ブラジルのアマゾンでなくても、東南アジアあたりでよさそうなところが多くありそうです。自宅で夜に強盗に襲われないように見回りが必要だなんて、それって相当「住みにくい」のではないかと感じました。ま、どこに住むかはその人の勝手ですが。

著者は酒好きのようなので、その地を選んだ理由として「お酒」も重要な要素だったかもしれないです。


もはや絶版です。私は図書館で借りました。
1996年初版です。今であれば、ブログで書かれるような内容でしょうね。この後数冊の本が出版されているようですが、最近の著者の消息は、ちょっとネットで検索した限りでは不明です。アマゾンでご健在であるとよいですが…

2013年11月24日日曜日

"Nadia's Hope" Lisa Buffaloe

この本は「神を信じることができて救われた」という締めくくりで、信仰心の薄い私としてはちょっと…とも感じました。主人公のNadiaは不幸な事件に巻き込まれて、肉体的にも精神的にも傷つき、特に精神的なトラウマからどのように回復(というか克服)したかが、現在から過去を振り返り、未来へ向かう構成となっています。まあ、ラブストーリーとしても楽しめます。そうとうなボリュームなので、少しずつ読むと、始めのほうの登場人物の人間関係を忘れてしまいそうになりました。
(kindle版は価格が変わるので、¥0の時に入手するのがいいかも。ちなみに、プライム会員ならば投稿日時点で¥0のようです)



‐‐‐単語、表現メモ‐‐‐
([ ]内のNoはキンドルでのページ)
■winkle one's nose
Nadia wrinkled her nose as she took a tumbler out of the cabinet and grabbed the spice. [No503]
ここでは3の意味かと思われます。「顔をしかめる」のほうが日本語の感覚としては近いでしょうか。
1.くんくんと匂いをかいだり、悪臭をかいだときのしぐさ
2.不快・嫌悪の表情
3.陽気にうんざりの気持ちを示すしぐさ

■turn stomach
The idea of forgiveness made her stomach turn. [No1199]
吐き気がする・ムカつくといった「嫌悪感」を示しています(たぶん)。おぞましいものに敏感に反応する場として、stomachがあるのに対して、日本語では「胸」である点はおもしろいです。

■two peas in a pod
They are two peas in a pod.   [No2755]
「似たもの同士で」。さやえんどうの中の豆2つなので、想像しやすい表現です。
「瓜二つ」だと、見た目だけを表すので、ちょっと違うと思います。

■He grinned like a kid caught with his hand in a cookie jar.  [No3020]
見つかってばつが悪そうににんまりする という感じが想像できます。
No6151にも同様の表現があります。(David's smile looked like a little boy caught with his hand in a cookie jar.)
英語で一般的な表現なのかよくわかりません。(そんな気がしますが)。

■"The pot calls the kettle black"
「目くそ鼻くそを笑う」Pot calling kettle black. [No5227]

■on cloud nine
Satan would be on smoke cloud nine if he could mess up your marriage. [No6394]
「幸福の絶頂」。単に私が知らなかっただけ?なら小恥ずかしいです。

「多読」は地道ですが、知らなかった英語表現に出会うにはよい方法ですね。

2013年11月23日土曜日

「オーパ!」開高健

作家開高健のアマゾン釣り紀行です。
初めの版が出たのはもう30年ほど前です。地域の図書館の検索システムでみたら、2010年にも新たに出版されていたようなので、この新しい版を借りて読みました。実は「直筆原稿版」とあるように、原稿用紙に書かれたそのものが書籍となっており、推敲の跡をみることもできます。「本」ではありますが、原稿用紙に書かれたものを読むのは、作家の息遣いが感じられます。

アマゾンから帰国の途中でブラジリアに立ち寄り、そこでブラジルの首都移転の歴史や経済状況などについて同行者と会話する場面は、著者の考えを垣間見ることができ興味深いです。ブラジルが莫大な借金をして、何もないところに数年間でブラジリアを作り上げたことについて、「男は借金がないと眠り込んでしまう」とか、「昔から男は自尊心で苦しむようになってるんだよ」という言葉は含蓄があります。

この直筆原稿版と、現行本では、著者の加筆修正による違いがあるらしいので、そこを比べて読むのも面白いかもしれません。

2013年11月10日日曜日

「プア充」 島田裕巳

本書のタイトル(プア充)は、「リア充」をもじったものでしょう。「プアでも充実」、高収入ではなくても、充実した生き方ができるためのhow toが述べられています。東洋思想の「少欲知足」(欲を持ちすぎず、現在の状態に満足する)を勧めています。本書の構成は、30歳の主人公がお金だけじゃなくても生きられることに気づく物語となっており、各章にはまとめがつけられています。物語に著者の言いたいことをのせた構成なので、堅苦しくもなく、読みやすかったです。

「人間関係やヒトとのつながりを大切に」といった、月並みなこと(=この手の本ではよく見られること)が挙げられている一方で、「競争とは無縁の安定しているダサい会社を探して就職」し「年収300万円しか稼がないがストレスとは無縁」ほうが幸せではないかと述べています。「プア充」の考え方では、仕事はお金を稼ぐための手段にしかすぎず、「仕事にやりがいを見出すことができなければ人生はつまらないというのは思い込みだ」と言い切っています。「思い込み」かもしれませんが、やはり仕事が楽しければそれは理想だと私は考えます。問題は、生きてくために働いているのに、逆に無理をしすぎて健康を害するとか、あるいは、過度のストレスで早死にするケースがあることだと思います。何事もやりすぎはよくないのではないかと…。

日本国民すべてが「プア充」的に生き、その結果、国の経済力や企業の競争力が低下したらどうしよう、と心配になります。しかし、ヒトがあって国や企業が成り立つので、この心配こそが本末転倒といえるかもしれません。

過去に見られたように、日本経済が劇的に発展する状況は今後期待できません。身の丈にあった生き方を選択するのも悪くはないでしょう。また、日本を飛び出して生活する可能性もアリかと思います。

2013年11月4日月曜日

「ラテンに学ぶ幸せな生き方」 八木啓代

「日本に住むヒトの生き方は幸せには見えないので、ラテン(アメリカ)に幸せな生き方のコツを見出そう」、というのが本書です。

これを読んで、やっぱりラテンがよいと思ったのは以下の点です。

■特に男性は小さいころから女性をエスコートする作法を仕込まれている

「文化」が変われば可能でしょうが、たぶん、日本では真似できないと思います。特に「ピローポ」(=見ず知らずの女性に向けて投げかけられる甘い言葉)は、小さい頃から馴染まないととても無理でしょう。

■絆のセーフティーネットがある

失業しても、居場所がなくても、とりあえずは親戚や友人の家に転がり込んでなんとかなるので、「ホームレス」にならなくてよいことが一例でしょう。ただ、現在日本のあまりにもホームレスに転落しやすい状況が異常なのかもしれません。おそらく、東南アジアあたりでも、失業してもなんとかなる事情はラテンと同じと思います。


一方で、そうかなあ?と疑問に思った点は以下のとおりです。

■「自分の家族を卑下しない、むしろ褒めまくる」のがラテンの特徴

これは別に「ラテン」に限定されていないと思いました。日本と英語圏の比較を書いた本では、やはり、家族に限らず他人を(お世辞ではなく)よく褒める傾向が日本より強いと述べられています(「ポジティブイングリッシュのすすめ」)。特に、自分の家族を卑下するのは「謙譲」の日本的美意識なのでしょう(世界に出て行っても通用しない・理解されがたいでしょう。)

■ラテンでひきこもりが起こらないのは、子供部屋はあくまで親の管理下にあるから

日本では、子供部屋は子供の占有物となっているために、引きこもりの一因となっているのだ、と言っていますが、それが大きな原因だとは思えません。ある程度、生活の水準が向上してきたからこそ「引きこもり」が可能になったのではないか、と私は考えています。一昔まえであれば、まともな子供部屋をもらえる子供は少なかったのではないでしょうか。
(ただし本書で使われている「ラテン」の定義は「ラテンアメリカ」、そして著者はメキシコにも住んでいることから、「メキシコ」の印象が強いと思われます。)



「アリとキリギリスの話」の別バージョン(ラテン版?)が紹介さていました。日本で馴染みのあるのとは違い興味深いので、以下、引用します。
冬になって食物がなくなると、キリギリスはアリを訪ねます。
「私が汗水流して働いていたときにあなたは何をしていたの?」
アリの意地悪な問いに、キリギリスは答えます。
「私は歌ってみんなを楽しませ、元気づけていたのよ」
それを聞いた、働くことしか知らず、生きる喜びを感じたことのなかったアリは反省し、
「では、これからは踊って暮らしましょう」と、キリギリスを迎え入れて、食物を分けて一緒に踊りながら、楽しく冬を越したのです。
通常の、「地道に将来に備えましょう」という教訓が得られないですね(笑)。で、こうしたキリギリス的に生きようとか、アリみたいに生きてどうするんだ、という見方を著者はしています。

私が思うに、「働きすぎ」が悪いのではなく、「意に反して働きすぎとなる」状況が悪いと思うのです。例えば、ブラックな企業での、時間外賃金未払いでの長時間労働を強いる例があります。しかし、自分で好きで働く(働きすぎる)ことのどこが悪いのか? 議論が進むと「働くこと」や「職業」の定義にまで踏み込まなければならないでしょう。「画家にとっては絵を描くことが労働なのか」とか、「アトリエにこもって延々と絵を描くことが「働きすぎ」といえるのか」、といった点です。

とりあえずは、食べ物に困らず、寝てても凍死する心配のない、暖かい場所に移り住めば、アリに頼らない、キリギリス的生き方を選択できそうですけどね。

ラテンアメリカの中でも、メキシコと音楽に興味のある方にはおすすめです。

「ハゲとビキニとサンバの国-ブラジル邪推紀行」井上 章一

リオデジャネイロで通算4ヶ月ほど滞在した経験から、ブラジルに対して考えたことが述べられています。著者は、現地大学の日本語学科から招聘されたため、自身が現地で感じた疑問に対して、ブラジルの大学生からの意見を聞くなどして考察をしています。「考察」というよりは、サブタイトルにあるように「邪推」といったほうがよいかもしれませんが、切り口はおもしろいです。

「ハゲが女性にもてることは本当か?」という疑問に関しては、「ブラジルでの有名な歌がありポピュラーだが、その歌詞の内容から判断すると、ハゲだからもてると考えるのは誤りのようだ」と結論しています。(その歌、Nós, os carecas (われらハゲ仲間)はyoutubeで探したところ、これかと思われます→http://www.youtube.com/watch?v=ULknVaXLFcQ

ビキニについては、ビーチで見かけるのは、必ずしもグラビアを飾るような女性ばかりではなく、おばちゃんや、脂肪に食い込んでるほど肥満な女性もみられると述べています。しかもビキニが「フィオレ・デンタル」(=デンタルフロスの意味から、いわゆる「紐ビキニ」のこと)であり、そして「見苦しい」体型であっても許容される背景(帝王切開が一般的なのにその傷は目立たないことや、社会的に低い階層は高級服には手が届かないが紐ビキニなら買えるなど)について考察しています。

女性の尻に対してなぜ、ブラジル人はこだわるのか、奴隷制の名残であるという説が紹介されています。そして、対照的に、日本人がなぜ、女性の襟元に興味を示すのかについても考察されています。日本で魅力的な女性を「ガン見」することは文化的に許容されない、しかし、男性の視線がうなじに向かうのであれば、女性から視線を返されることもなく、そこが視線を集める部位になるというのが著者による考察です。

以前の2つ(「ブラジルの流儀」「ブラジルを知るための56章」)とは、違った視点でブラジルを見た興味深い本です。

2013年10月27日日曜日

「ブラジルを知るための56章」アンジェロ イシ

前回に引き続いて今回もブラジルの概要を知るためにこの本を読みました。第2版では、2009年末までの情報がカバーされています。

前回の「ブラジルの流儀」では、日本人からの視点で語られていたのに対し、こちらでは日系3世でジャーナリストの立場からみたブラジルが語られています。
犯罪率の高さと治安の悪さに関しては同様に述べられているものの、夜間の信号無視が「常識」かどうかは少しニュアンスが異なり、こちらでは「停車中に強盗に襲われるのを避けるため赤信号を無視して走る運転手もいる」とは記述されています。どの程度の深刻さかは、場所によっても変わるのでしょう(いずれにしても物騒ですが…)

以下、面白いと思った章についてです。

第9章 祝日でわかるブラジルの社会
ここで紹介されていた、日本では馴染みのない祝日は以下のものです。
 ゴールキーパーの日 4月26日
 召使の日 4月27日
 姑(舅)の日 4月28日
 UFOの日 6月24日
 学生の日 8月11日
 未婚者の日 8月15日
 銀行員の日 8月28日
それぞれに「由来」があるのでしょうが、詳しくは述べられていません。「UFOの日」は気になります。


第15章 カーニバルに関する「定説」
「カーニバルではいつも人が大勢死ぬ?」や、「多くの貧民はカーニバルの衣装のために1年間の貯金を費やしてしまう?」という定説の誤りが指摘されています。前者の定説については、誤りであることが「ブラジルの流儀」でも書かれています。


第16章 何でもジョークにできる国民性
かなり下品なジョーク(「ピアーダ」と呼ばれる)でも受け入れられる文化であることが述べられています(日本に住むブラジル人もそう言ってました。)具体的には、かなり辛辣なジョークであっても、笑い飛ばせる文化のようです。
「17章」にいくつかの例があり、その一つは、以下です。
カミカゼ(特攻隊)のインストラクターが弟子たちを前にこぼす言葉。
「デモンストレーションは”一度しかやるつもりはない”から皆よーくみておけ!」
おそらく、このピアーダに対してブラジルでは大爆笑なのでしょうが、特に日本ではどうなんでしょうか。他に、いわゆるエスニックジョークに近いものもあるらしいですが、それらがどの程度許容されるかは、その国の文化に依存しているのでしょう。福島原発事故に関して、フランス(だったか?)の風刺画が物議を醸し出しましたが、ブラジルが日本の立場だったならば、ブラジルではジョークとして笑い飛ばされていたのでしょう。


第44章 「ジェイチーニョ」という哲学
 「ブラジル流の問題解決法」で、裏金を使ったり、コネを使ったり、裏から手を回して物事を何とかする文化があるみたいです。だから、いろんな面倒くさいことや役所の手続きをする代理人である「デスパッシャンテ」という職業が成り立っていると述べられています(「ブラジルの流儀」でも触れられていました。まさに「流儀」と呼べそうです。)
おそらく、ブラジルでビジネスをしたり暮らしたりする場合には、必然的に直面するのでしょう。「郷に入れば郷に従え」です。


各章の最後には文献が紹介されているので、興味のあることに関してさらに深く知ろうとする時にはよい道しるべとなるでしょう。

2013年10月19日土曜日

「ブラジルの流儀」 和田昌親(編著)

ブラジルについて、ざっとしたことを知りたかったので、この本を読みました。出版が2011年なので、比較的最近の事情をカバーしているのがよいです。
第1章の社会・生活の話から始まり、第5章の政治・外交の話と章立てされており、各章は、「なぜ○○なのか」という2~3ページの短い部分で構成されています。したがって、まとまっていない細切れの時間でも読み進めていくことができます。第4章に「サッカー・スポーツの話」があるのは、ブラジルらしいと思います。


読んで、ブラジルとタイで似ている点に気づきました。

「貧しくても楽天的」
これを「ラテン的」と呼ぶひともいるでしょう。余談ですが、日本の将来も経済的にみると明るくないので「ラテンで行こう」と、日本人の生き方を変える提案をしていたのは、森永卓郎氏だった気がします。ブラジルの場合は、生きている間を楽しむ生き方であるのに対して、タイでは、「来世」や「生まれ変わり後の人生」に賭ける点が違っているでしょう。「だからタイ人(特に庶民層)みんな必死でお寺にお参りしている」といっている人もいます。

「トイレの紙は流さず別のゴミ箱に捨てる」
紙を一緒に流さずに別に捨てる方式の水洗トイレ地域は、世界的にみればかなりある気がします。中級以下のタイのローカルなホテルでは、トイレが洋式だけど、トイレ内にそこそこの大きさのゴミ箱があると、紙をそこに捨てるのか、流してよいのか躊躇します。


大きく違う点は、犯罪率の高さでしょうか。「夜間に赤信号を無視する(交差点では停止しない)」のが常識とは驚きました。赤信号であろうと停車すると襲われる恐れがあるのが理由のようです。都市部だけだと思いたいですが、日本では想像できないです。

ある国について語る場合、あくまでもその一面、ひとつの切り口でしか語れないので、本書の内容を鵜呑みにするのはなく、複数のソースから情報を得るのがよいでしょう。

2013年10月14日月曜日

”Cuthbert - The Troubadour Cat From Over-The-Seas” Caro York

吟遊詩人ネコのCuthbertが、海を渡り世界を放浪する話です。「相当読みやすかった」と思って、Amazonサイトの「内容紹介」を見てみると、「Ages 6 - 11 like Cuthbert the best.」との記述が… さらりと読めるレベルは6~11才レベルの本ということに気づきました。私の場合では、およそ1ページで多くても2,3の単語の意味を確認するだけで読み飛ばせるレベルです。「パンダ読み」には適している1冊です。

序盤の、「big mouse」を探しにフロリダに行く部分が一番面白かったです。直接表現されていませんでしたが、「big mouse」を、ディズニーランドのミッキーマウスだと勘違いしていた件です。それをオチにして話が終わっていてもよかったのではないかと思ったくらいです。



---単語・表現メモ---
■steel oneself to:覚悟を決めて~する
Cuthbert steeled himself to talk to the polar bears.
動物園でホッキョクグマに話しかけようとする場面で使われてました。「ネコ」が「クマ」に話しかけようとしているですから、ちょっとした覚悟が必要な状況は理解できます。

2013年10月6日日曜日

英語学習に利用できるPodcast

英語の学習に使えるポッドキャストは便利です。しかも、無料であり、私も利用しています。
ただ、時折、消えてしまうプログラムがあるので、見直しの必要はあります。(CNNの2分くらいのニュースは以前はあったのですが、今は見当たりません)。

これまでのお気に入りは以下の3つですが、最近は①を主に聞いています。

①CBS news weekend roundup

内容は、1週間のニュースのまとめです。そんなに遅く話してはいないのですが、とても聞きやすいです。私のレベルでは一度聞いただけでは内容を十分に理解できませんが、同じ内容を何度も聞いていくうちに少しずつわかってきます(気のせいかもしれないが)。週1回(金曜日)のアップデートなので、1週間同じ内容を繰り返し聞くわけですが、40分の長さなので繰り返して聞くためにはよいと思います。ただしCBSなので、ニュースの内容はアメリカ寄りになってます。
https://itunes.apple.com/jp/podcast/cbs-news-weekend-roundup/id74837238

②6 Minute English

こちらはBBCのものです。その名の通り6分間です。2人で会話を進める内容です。単語の説明や言い換えも含まれています。始めに3択の質問があり、最後にその答えを明らかにするのがいつものパターンです。

③ESL Podcast

おそらくあまりにも有名だと思いますので、説明の必要もないかと…。スクリプトに基づいて、その内容を解説する構成です。Jeffの茶目っ気あるところが好きです。English cafeのシリーズでは、ある有名な人についての話や、実際のインタビューに基づいた内容になっています。
Learning Guideもウェブサイトで提供されていますが、こちらはメンバーになってお金を払わないと見ることができません。詳しい解説が不要であれば、なくても問題ないと思います。
https://itunes.apple.com/jp/podcast/english-as-second-language/id75908431



週末に新たなものを探した結果、以下の2つに興味を持ちました。

④Culips ESL Podcast

なんだか構成が③のESL Podcastと酷似している気がします。しばらく、どんな感じか聞いてみようと思います。
https://itunes.apple.com/jp/podcast/culips-esl-podcast/id279999557

⑤Erin Burnett OutFront (audio)

早口ですけど、なんとかついていける感じです。こちらは女性なので、上記の①CBSの男性の声ばかりを聞くよりはバランスがよくなるかもしれません。
https://itunes.apple.com/jp/podcast/erin-burnett-outfront-audio/id475738195


インターネットの時代になり、英語学習の教材がタダで豊富に利用できるよい時代になりました。残る問題は「やる気」の維持かもしれないです。



2013年9月29日日曜日

"Shelve Under C: A Tale of Used Books and Cats" Jenny Kalahar

 古本屋で、一時的に預けられているネコが話の中心です。また、ネコのほかに、その本屋で本屋の主人から古本を見極める技を教えられる少年の話がうまく絡められています。なので、本のタイトル通りの「ネコ一色」の内容ではありません。
ネコたちは、どこかに引き取り先を待つために、一時的にその本屋で飼われており、また、その少年も両親を事故で失っていることから、どちらも孤児(ネコは「孤児」と呼べない気はしますが)である共通点を持っています。ネコのしぐさや動作はよく描かれていますし、さらにその少年の心理的な描写がこの本の面白いところでしょう。



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個人的には初めて見た表現を以下にまとめてみました(カッコ内は本文の位置番号)。

■higgledy‐piggledy:ひどく乱雑に
One of his arms was up and the other down and his legs were all higgledy‐piggledy, [No.821]

■get the boot:首になる
I worry all the time, like I'm going to get the boot cause they're going to decide they don't really want me.[No.1212]

■pinch one's lips :口をぎゅっと閉じる(抑圧した怒りや不機嫌の口もと)
At this, the boy pinched his lips together tightly and tried not to show emotion.[No.1699]

■walk on air:うきうきした心でいる。有頂天になっている。
Kris walked on air all the way home. [No.2085]


次にこれらの表現に出会った際には、再び辞書で調べないように覚えておきたいものです。

2013年9月23日月曜日

「マネジャー13の大罪」 W.スティーヴン.ブラウン

以前に、「マネジメントとは何か?」と問う上司がいました。彼は「部下を管理すること」と信じていたようで「マイクロマネジメント」を頭に描いていたようでした。「それは違うんじゃないか?」という単純な疑問から買ってみた本のうちのひとつがこの本でした。

この本の初めのほうに書かれてますが、「こうすればうまくいく」という視点ではなく、「こうしたらダメなんだ」という視点で語られている点が、少し変わっています。「過去の成功例をトレースしても普遍的でないことが多いが、過去の失敗例は共通して使えることが多い」というのは同感です。大体、「成功の法則」は、後付け、すなわち、過去の成功を後で説明するから成り立つと思われるからです。

その13の大罪(原題では13 fatal errors)とは、以下です。
1.結果に対して責任をとらない
2.部下の育成を怠る
3.やる気を起こさせない
4.組織内での立場を忘れる
5.部下と1対1で接しない
6.利益の重要性を忘れる
7.問題点にこだわりすぎて目的を見失う
8.部下との間に一線を引かない
9.目標達成基準を設けない
10.部下の実務能力を過信する
11.部下のたるみに目をつむる
12.成績のよい部下だけに目をかける
13.アメとムチで部下を操ろうとする
「4.組織内での立場を忘れる」の「立場」は、「マネジャーであれば、経営側の立場でいる」いう意味です。この章では、「代名詞病」という面白い表現がでてきます。「代名詞病」とは、組織内の上層部や経営側に対して「彼ら」という言葉を使う傾向であり、本来であれば「私たち」という代名詞が使われなければならないとしている点です。
日本語の場合には、主語が省略されるのがむしろ通常なので、英語ほどは「主語」が意識されません。しかし英語であれば、その話し手の立場が主語で示されなければならないので、なおさらマネジャーは経営側であることを忘れてはいけないと考えられます。

「5」は、個別に部下を管理する重要性を述べています。「グループマネジメント」は、単にマネジャーが手間を省けるという長所しかなく、時間や手間がかかっても「個性尊重のマネジメント」が必要なようです。一言で「部下」といっても、人間それぞれ能力や考え方、ものの見方など違うので、個別に接して、管理のやり方を変える必要があるのは当然でしょう。そういった、相手によってやり方を変える必要があるからこそ、マネジメントの難しさがあると思います(画一的な方法があれば、マネジメント能力の優劣は人によってほとんど変わらないことになるでしょう。)

1対1で向き合う重要性がある一方で、部下と近づきすぎて仲間になるのはNGであるというのが「8」です。社員パーティーやクリスマスパーティーで部下と一緒に楽しんでもよいが、その最中でも職業的関係、ビジネス上の関係を忘れてはいけないと述べています。
では、日本の「ノミュニケーション」はどうか?飲み会の席楽しく飲むのはOKでも、マネジャーは部下とは一線を画す(*)意識を強く持つべきなのでしょう。

「11」では部下の仕事が不満足である場合に、それを看過することなく対処することが述べられてます。具体的な対処内容は、一般的なビジネス書に書いているようなこと(人前でなく1対1で対応するとか、感情的にならないとか、具体的な問題点を指摘するとか)です。だから「8」の一線を引くことができなくなると、感情的に甘くなり「11」に陥るのかもしれません。



原書は1991年に発刊ですが、内容的には現在でも通用するものが多いと感じました。

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(*)「一線を画す」を英語でどう表すかが気になり、Weblioで調べてみました。ほぼ、そのままに、“draw the line”と表現できるようです。
draw the line : (idiomatic) To set a boundary, rule, or limit, especially on what one will tolerate.
例文としては、
We must draw the line between public and private matters.(公事と私事を区別せねばばらぬ)

2013年9月16日月曜日

「スーパーホテル」に滞在して、人件費のことを考える

仕事の都合により、2~3週間ほど同じところに滞在しています。最近では、宿泊先をネットで簡単に予約できるので便利です。
滞在しているその北の地方都市には、数件のビジネスホテルがありますが、ここのところ「スーパーホテル」をひいきにしています。

一泊5000円前後(たぶん冬はシーズンオフなのでもっと安いです)で、値段は安いほうでしょう。

以下のような特徴があり、これらが人件費節減に寄与していると考えられます。
  • 部屋のカギはなく、チェックインの際に暗証番号をもらう。チェックアウトの手続きは不要。
  • 部屋に電話がない。すなわちフロントの電話番が不要。
  • 現金支払いの場合には、ATMみたいな機械へ現金を入れる。
  • フロントは7~24時までしか開いていない。

また、ビジネスホテルの機能として「よく眠れる」ための工夫がなされています。
  • 枕の選択が可能。好みのものをフロント横からもっていってよい。
  • 窓のブラインドが完全遮光になっているため、早朝の明るさに邪魔されずに眠れる。
あとは、朝食無料(1階のロビーで、いわゆるバイキング方式で好きなものをとる)もよい点です。


部屋の清掃が必要であれば、10時~15時に部屋を空けなければならないのは不便ですが、(掃除なしで、部屋に居続けることも可)。これは、日本のホテルならば同じかもしれません。決まった時間に集中して清掃をすることが人件費の節約には欠かせないと思われます。


フロントで下記の本が販売されていました。たぶん、この本の中に、スーパーホテルの成功の秘密が書かれているのでしょう。


日本国内でのホテルなどのサービス業は、インターネットで海外の労働力を使う訳にはいかないので、当面は、「いかに労働力を減らせるか?」の傾向は続くでしょう。
しかし、将来、日本が移民を受け入れできるようになった場合には、労働の単価を下げられるので、そこでまた新たなビジネスモデルが生まれるのか、興味のあるところです。

2013年9月15日日曜日

「夏への扉」 ロバート A ハインライン

SFですが、ネコが登場します。ネコ好きにはよくわかるネコの描写がでてきます。(逆にネコ好きでないと全然共感できないかもしれません)。著者がかなりのネコ好きであったことが容易にうかがえます。

例えば、主人公ダンのネコに対する見方として、
「猫にはユーモアのセンスがない。あるのは極端に驕慢なエゴと過敏な神経だけなのだ。それではいったい、なぜそんな面倒な動物をチヤホヤするのだと訊かれたら、ぼくには、なんとも答えようがない。」
という件があります。ネコ好きな私としてはよく理解できます。

物語の前半部分は、SF的な要素がほとんど出てきません。事業のパートナーであるマイルズとベルに裏切られた主人公ダンが、失意のあまり冷凍睡眠を決意し、その際に飼い猫ピートも一緒に冷凍睡眠するように計画します。ただ、その前に裏切りの真相を知るべく、マイルズの家に乗り込み、どのように騙されたかを知るところとなり、冷凍睡眠行きを思いとどまる気になります。しかしベルの策略で、一種の口封じのために冷凍睡眠に送り込まれます。ダンと一緒にいたピートは危うく始末されそうになったのですが、マイルズとベルに引っかき傷を負わせて外に逃げ出します。その結果、ダンは30年間眠り、その間にピートは「もしかして外で野良猫化して、もはやダンとは再会できない?」流れとなり、(ネコ好きであれば)ハラハラドキドキのストーリー展開です(結局はハッピーエンドとなるのですが。)

後半部分で、不本意ながら冷凍睡眠させられて30年後に目覚めたダンが、一種のタイムマシンで再び冷凍睡眠する前にまで戻る展開で、やっとSF的な流れとなります。


「30年後に冷凍睡眠で行って、そこからタイムマシンで30年前に戻り、そして再び冷凍睡眠で30年後に行く」ことをやっているのですが、「過去の自分がいるその時間と場所に、未来からの自分が存在できるのか」については疑問を持ちます。
また、過去を変えると別の未来へ行ってしまう、つまり同じ世界が平行に流れていて、過去を変えると別の平行した世界へいってしまうとも思ったのですが(パラレルワールドだったか…)。そういえば「バックトゥーザフューチャー」でも、過去に戻って将来の両親をくっつけるために奮闘するストーリーだったかな(結婚して自分が生まれないと、将来の自分が存在しなくなる)。

このあたりのツッコミどころはありますが、ネコのからんだSFとしておすすめの本です。
言うまでもないですが、kindle版だとかさばることもなく携帯に便利です。


翻訳でなく、元の英語版で読めば、また違った読み方ができるかもしれません。そのうちチャレンジしたいものですが… 

2013年8月31日土曜日

「聖痕」 筒井康隆

事件により、5歳で性器を切り取られてしまった貴夫が、幼少期からの美貌を持ったまま成長し中年期になるまでのストーリーです。1970年代から東日本大震災までの日本の状況と重ね合わせて主人公の半生が描写されています。現実の世界では、成人になって去勢するケースもあるでしょうが、この話の設定では第二次性徴を迎える前に去勢されたことになっています。
性的な欲求を知るあるいは感じることがないので貴夫は味覚が鋭くなったようなことも書かれており、そういうこともあり得るかもと感じました。目の見えない人が、視覚以外の感覚が鋭くなることと似ていると思えます。

「幼少期に性器を失ってしまったが、それをひた隠して過ごす」ことが、主人公が大学生になるまでは中心となっており、「秘密がバレるのか」とか、「異性関係や友情関係はどうなるのか」が気になりました。そこ以降は主人公の持つ「料理と味覚への関心」と彼を取り巻く状況が中心となっています。料理に造詣が深ければ、より深くストーリーにはまりこめたかもしれません(例えば、木下謙次郎の「美味求真」の話しがよく出ます)。

幼年期に性器を失ってしまった主人公の「性的欲求のない」心理的な特殊性と、周囲の人間(秘密をひた隠しにする家族、事実を知らずに心を寄せる異性や同性)との関係性が描かれているとまとめることができるでしょうか。他の筒井作品のテイストにも通ずるものがあります。

性器を切り取って持ち去った犯人はどうなったのか、そして持ち去られた性器はどうなったのか、については、最後のオチにつながっています。



この小説の特徴は、あまり見慣れない日本語や枕詞が頻繁に使われており、見開き左側に注釈で示されている点でしょう。例えば「三伏」(さんぷく:夏の暑い期間)という単語が使われていますが、この言葉を初めて見、そして意味を知りました。特に枕詞を多く使っているのは著者の実験的試みでしょう(間違っていたらスミマセン)。

いろんなことを知っていることが「教養」であるとするならば、「本の理解度は本を読む人の教養のレベルで異なってくる」と言えるかもしれません。「聖痕」の意味すら知らなかったので、キリスト教をどこまで知ってれば十分かわかりませんが、まだ自分は教養不足なのでしょう。まあ、小説を読むのに教養だ云々いうことが不粋かもしれませんけれど・・・







2013年8月25日日曜日

”Quiet” -Susan Cain- (その3)

キンドルペーパーバックである標記本の、その2の続きです。

人種文化の違いが、外向性、内向性の違いを生み出している典型的な例として、中国人(アジア系)とアメリカ人(欧米系)の比較で考察しています。予想通り、アジア系では自分の意見を主張せず、しゃべりまくったりしないことが「美徳」とされている一方で、欧米系では、全く逆で外向的な態度が評価されることを取り上げています(かなりのステレオタイプな見方に基づいている気もしますが)。文化的な違いの理由として、一つには儒教の影響、もう一つにはグループアイデンティティによると考察しています。個人的には、世代間での違いも大きいと思います。外向的で物怖じしない若者が増えてきたことは、日本も随分と欧米化されてきたことが影響しているのでしょうか。

「外向性」であることがよいとされることが多いのですが、内向性であっても「外向性」を演じることでその恩恵をうけることが可能であると述べています。外向的に見えても実は、そのフリをしている人がそこそこいると言っています。従って、ビジネスの局面では、あえて外向的に振る舞うことでリーダーシップをとることも可能でしょう。

最後に教育や育児の際に、内向的な子供に対する接し方が述べられています。現在の「学校」のしくみが内向的な子供に対しては合っていないことが指摘されています。内向的な子供にとってはみんなの前で発表したり、自分の意見をグループで述べることが苦手でも、それを無理に強制しようとすることはよくないようです。それでも、ある年齢に達したら外向的に振る舞う術を「教育」することが、世渡りの技術として教育されてもよいかと個人的には感じます。


「外向的で活発であること」がよいとみられる一般的な見方に対して、「内向的で物静かであってもよい点が多くある」ことを、多くの研究結果から示している内容であるとまとめることができるでしょう。

2013年8月20日火曜日

タイでタイ語の必要性を考える

ブログの主旨から外れている気がするが、せっかくタイにいるので、今回もタイネタを。

タイの街を歩いていると、いろんな看板や標識が目にはいる。自分の母国語は日本語なので、日本語が最も目につく(かなり少ない)。次に認識されるのは英語で、その表記を思わず読んでしまう。タイ語表記は、読めそうであれば読もうとする(厳密には中途半端に読んで、自分の知っている単語の情報と組み合わせて理解すると言った方が正しい)。

不完全ではあるにせよ文字を読めるのは便利だが、一方で日常生活の中でおびただしいけ情報に曝されていることを再認識する。日本で町を歩けば広告(日本語か、英語)が目にはいり、それらを読まずにおくことはできない。(よほどボンヤリしていれば別だが)。視覚から文字の情報が脳へ流れこんでくる感じだ。

以前、タイ国境からミャンマーに、ほんの数時間だけ行ったことがある。その時は、あちこちであの丸っこいビルマ語を目にしたものの読めず、なぜか不安な気分になった。その時に、視覚から得られる脳への情報量は少なくなっていたのではないか、と考えると文字の読めないことにもメリットがあるのかもしれない。

ローカルな言語を読めると、そこでの生活は便利だろうが、都会(タイだとバンコクとか)に住めば英語だけでも問題ないだろう(日本でも東京や大阪といった都市であれば、日本語が出来なくても暮らせそうだ)。逆に地方で暮らそうとすれば、現地語の必要性は高くなるだろう。地方に行くほど英語表記が少なくなるのは、日本でもタイでも同じ気がする。

ただ、タイ語の欠点は、原則タイでしか使えないことだと思う。日本語もそうだがローカル性が高すぎる。だから、「汎用性」という点では、英語を除くとスペイン語やポルトガル語や中国語のほうがよいのだろう。一度はタイ語をある程度に極めようとしたが、当面は移住の可能性もないので、再び英語学習に集中するに到った。

「大抵の国では、都市部に住むなら英語で何とかいけるんじゃないか」と思う一方で、「現地語が出来ればやっぱり楽しいだろう」という結論かな。ただ、人生長くても100年ほどなので、語学にどれだけの時間をかけるかを考えておいた方がよいと思います。

タイの田舎で出会ったネコ.
タイ語で話しかけないとダメかも…

2013年8月18日日曜日

タイで感じること


何とか夏休みをとることができ、今、タイにいる。
タイに来て一番に感じるのは、物価の安さだ。スーパーで売っていたスイカ(ラグビーボール形)はキロあたり19バーツだった。1万円をこちらで両替したら3009バーツだったので、キロ63円に相当する。小玉スイカ3kgとして約190円、日本で買うと1000円はするのでざっと5分の1である。(スイカの種類にもよるが。) もちろん果物や野菜は極端な例かもしれないが、総じて食費は安く済む。しかも屋台や市場で調理済みのものを買っても同じく安い(安く上げるために自炊する必要もない。)
田舎の、とある市場にて
だから「人生の谷」(注)にいた時に、いっそのことタイに移住しようかと真剣に考えたことがある。理由は日本より安く暮らせるのではないかと考えたからだ。しかし、結局その計画を実行するには至らなかった。
一つには、健康に自信がなかったためである。日本では健康保健でそれなりのお金を徴収されているが、同じサービスを海外で受けるとなると高くつく場合が多いだろう。
もう一つは、自分の運の良さに自信がなかったからである。こちらタイのニュースを見ていると、事故や事件が多い気がする。これらに巻き込まれなければよいのだが、その保証はない。(日本でも、物騒なご近所殺人事件が起きたので、日本が平和であるとも言えないが。)麻薬中毒者の絡んだ事件は、日本より明らかに多い。

タイ移住を考えていた頃、タイに関する本をいろいろ読んだ。タイ本は数多くあるが、下川裕治氏の本を挙げたい。彼の本はどれも面白かったが、最近のもので「移住」ものだとこれだと思う。

「行き場」ではなく「生き場」とにしているところが、日本で暮らす閉塞感から脱したい人々の感じを表している。

(注)山あり谷ありで、よい時と悪い時のどちらが山でどちらが谷かという議論(?)がありますが、「あの時がピークだった」と言ったり「どん底だった」と言ったりすることから、よい時が「山」で、悪い時が「谷」だと解釈しています。




2013年8月11日日曜日

”Quiet” -Susan Cain- (その2)

標記の本を未だに読みきれておらず(現在、42%くらいです)、今回も途中までの面白そうな点をアップします。“Quiet: The Power of Introverts in a World That Can't Stop Talking”by Susan Cain(その2)です。(その1はこちら

「ブレインストーミング」に関して、みんなでアイデアを出すのはよい方法であると考えられていますが、「才能のある」ヒトの能力を十二分に発揮させたいのであれば、必ずしもベストな方法ではない事例が紹介されています。大きな発明をできるようなヒトにとっては「グループワーク」ではなく、むしろ一人でこもって集中したほうが能力を出しやすく、そういったヒトは内向的なヒトが多いと分析しています。

幼児期からの観察によって内向人間と外向人間を区別する研究の結果は面白いです。幼児に刺激を与えて「たやすく反応するのが外向人間で、なかなか反応しないのが内向人間である」、と考えがちですが、実は逆だというのです。内向か外向かの違いは、外部に対する刺激をどの程度求めるかによるらしいのです。
人間は基本的には何らかの刺激を求めており、「十分な」刺激のレベル(閾値)はヒトによって違い、そのレベルは外向人間では高く、内向人間では低いようなのです。従って、幼児期の段階で容易に泣いたり笑ったり外部の刺激に反応しやすいのは、将来の内向人間であるということです。
なので、大人になって人前で話すのが苦手である現象は、その状況がそのヒトにとっての刺激のレベルをオーバーしているからであり、緊張しないヒトにとっては、まだ刺激レベルにまで達していないと考えられているようです。(ただし、結果に対する原因はただ一つが対応しているわけではないので、現実の世界では一対一の対応で説明できるほど単純ではないとも言っています。)
外向人間のほうがパーティー好きであったりするのも、刺激を求めるためだと考えると納得のいく説明です。


(たぶん)その3へ続く。


なぜか、キンドル版で2種類あり(いまさら気づきました)、今回リンクを貼り付けたもののほうが40円くらい安いようです。

2013年8月3日土曜日

”Quiet: The Power of Introverts in a World That Can't Stop Talking” -Susan Cain- (その1)


私の参加している英語のグループレッスンで、たびたび性格の話題が取り上げられてきました。そのときの英語の先生に勧められて、この本を読んで見ようと思いました。

内向的な性格(introvert)と、外交的な性格(extrovert)のどちらが得か? 一般的には内向きの性格は損することが多いのでしょうが、内向きな性格のよい点に焦点を当てている内容でしょう(まだ途中までしか読んでいないので断言できません)。

今のところ全体の約20%しか読めていません(パート1の2章まで)。本を読み終えるまでにあと18時間かかるというのがキンドルの分析です(キンドルの画面の下をタップすると表示されます)。

全体の構成からして、たぶん、まだ「さわり」の部分でしょうが、このままではいつ読みきるか怪しいので、とりあえず「その1」としてアップします。


なぜ社交性が必要となってきたのかについて、歴史的な流れから解析をしています。もともと外交性はそれほど重要ではなかったのに、工業化が進み、セールスマンが登場するころになってから外交的な態度が注目されるようになったことなどがまとめられています。

ハーバードビジネススクールでも、外交的な態度を要求され、内向きな性格の学生は居心地悪く感じている例も出ています。

あとは「よくしゃべる」ことのメリットについて具体例が書かれています。
早くしゃべる、よくしゃべるのがリーダーとして見られるようです(位置No.1079*)[正しくは、位置No.1020の誤りでした(130810追記)]
The more a person talks, the more other group members direct their attention to him, which means that he becomes increasingly powerful as a meeting goes on.
It also helps to speak fast; we rate quick talkers as more capable and appealing than slow talkers.
*キンドルではページではなく位置Noで場所を示す仕組みです。たぶん、ページだと表示型式の選択方法によってずれるからでしょう。

一方で、外交的な性格が必ずしもリーダーとして機能するわけではなく、proactiveな傾向のメンバーがグループに含まれる場合には、むしろ内向的な性格のリーダーのほうがチーム全体のパフォーマンスを向上できる実験が紹介されており(No.1110付近)、興味深いです。



キンドル版は、実際の本よりは安いのが最もよい点です(下のリンクはキンドル版です)。さらに、読んでいる最中にわからない単語を調べられるのがいいですね。

2013年7月28日日曜日

「Coffee in Manila」 A concerned American

今回読んだ本は、アマゾンから入手したキンドル版のペーパーバックです。

そこそこの長編でしたが、特に中盤までは中に入り込むことができました。

アメリカ人中年男性Ryanがオンラインデートサイトで知り合った女性にフィリピンにまで会いに行って、そこから真実の愛に気づくお話です。日本語でこう書くと、女性が単数だか複数だか曖昧ですが、彼は3人の女性と順番に数日ずつ会う約束で旅立ちました。
彼や女性たちの心理状態の変化がかなり興味深かったのですが、後半では、ちょっと説教くさくなり(まさに聖書の話などが盛り込まれてます)少し興味をそがれました。あとがきを読んで、基本的に著者("A concerned Americanと書かれていることからもわかるように、匿名のようですが)はキリスト教関係のようで、それを知って「説教臭さ」の理由に納得しました。

マニラでコーヒーショップを開いて、国際結婚をサポートしている夫妻がRyanを支える重要な役目を担っています。そのオーナーは、彼らのコーヒーショップをあたかも教会のごとく機能させ、また、週末にはcharacter building classを開いており、牧師のような役目を果たしています。また、コーヒーショップオーナーが一般の人々に献身的である大きな理由は、実はそのオーナーの娘に理由があったのです。ネタばれするので、話の筋はこの程度で止めておきます。


キャラクタービルディングのクラスで何を教えているかを聞かれた時の以下の言葉は説教臭さはあるものの、人生のパートナーを探す際には重要でしょう。
Basically, we teach everyone in attendance that if they ever want to find the right person in life, they first need to be the right person.




いくつか(個人的に)興味を引いた英語表現を以下に挙げたいと思います。

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Besides, with so many things to do in Manila to keep them busy all this week, why rock the boat and muddy the waters before they even met in person?
■rock the boat:大事なときに波風を立てる、波乱を起こす
直訳は「ボートを揺らす」だから、ほぼそのままですね。

■muddy the waters:話を混乱させる
直訳は「水を濁らせる」なので、意味は想像しやすいです。
"waters"は修飾語をともなって「困難な状況」の意味で使われるようです。
いつものweblioでは例文が見つからず、手持ちの辞書(プログレッシブ英和中辞典)に例文がありました。
dive into the murky waters of controversy(大論争の真っ只中に飛び込む)

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Not only that, in some cases, they made the same so-called promises to other women as well, in the highly competitive and cutthroat world of online dating.
■cutthroat:「殺人」ではなく、「殺人的な」→「競争で情け容赦のない」 の意味です。

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■head full of salt and pepper hair
「ごま塩頭」は英語では「塩コショウ頭」だったとは。ごま塩が英語圏ではポピュラーでないのが理由でしょう。

■beam from ear to ear
beam=「微笑む」ですが、おそらく"grin from ear to ear"(口を大きく開けて笑う)のほうが一般的な気がします。

■square:まっすぐな直接的な方法で
She looked him square in the eyes, an anxious expression on her face.
直訳的には「まっすぐに目をみた」です。状況としては、「浮気の疑いを持った妻が、夫に対して目をそらすことなくじっと見つめている」ときを思い浮かべるとしっくりするでしょう。
以前にも挙げた"square one's shoulders"でもそうですが、squareは四角いというよりは、まっすぐなイメージで使われることが多いのかもしれません。

■high and dry:取り残されて
Maricel seemingly left him high and dry.
ここではleftとともに使われているので「見捨てた」の意味です。

■iron out:アイロンをかけて皺を伸ばす→問題を解消する
As soon as we iron out the details, you'll be among the first to know.


自らのボキャ貧を晒すのは恥ずかしいですが、当ブログにお越しいただいた方々に役立てばうれしいです。


キンドル版は値段がよく変わります。入手したときは無料でしたが、これを投稿時点では99円です。

2013年7月21日日曜日

「生の短さについて」セネカ

■生き方について、人それぞれの考え方があると思います。「太く短く」というヒトもいれば、「なるだけ長生きしたい」というヒトもいるでしょう。「細く長く」派は聞いたことありませんが、中には「ぬるい感じ」で生きたいヒトもいるでしょう。

ただ単に長生きすることに対して疑問を呈し、時間を浪費することなく大切に使おうというのが「生の短さについて」の主旨です。セネカの生きた時代は今から2000年余りも前であることに驚かされました。

「無駄に長く生きる」ことに対して、以下のように述べています。
誰かが白髪であるからといって、あるいは顔に皺があるからといって、その人が長生きしたと考える理由はない。彼は長く生きたのではなく、長くいただけのことなのだ
その通りだと思います。
が、一方で「ただ長くいた」としても、老人はその年まで「存在している」だけですごいのではないかと時々感じます。それは本人の心がけによるものかもしれませんが、そこまでの人生の運のよさが「凝縮された」結果ともみてとれます。70年も80年も生きながらえてきただけで「奇跡」じゃないかと思うのです。



■ただ長く生きるのではなく、充実して生きることについては、
ガンジーの言葉:
"Live as if you were to die tomorrow. Learn as if you were to live forever."
を思い出します。

他人に振り回されて時間を浪費しないようにする大切さは、スティーブジョブスも述べています。
"Your time is limited, so don't waste it living someone else's life. Don't be trapped by dogma —--which is living with the results of other people's thinking."


本書の全体の1/3が訳注と解説となっており、古代ローマの歴史に疎い私にとっては本編よりも役に立ちました。


2013年7月15日月曜日

今年半年を振り返る


前回2月の振り返りからひさびさです。今年もついに残り半年を切りました。
そして、ブログ更新を週末の土日としていましたが、遂にこの「公約」も途絶えてしまいました。

当初の、ブログの目的(仮)では
このブログでは、私kapiが読んだ本のレビューやそこから考えたこと、語学学習について記述したいと思います。
ここでは、読者の皆さんに役立つことを目的とし、日々遭遇する不満や言いたい悪口の類は書かないつもりでいます。
 と書きましたが、果たして「皆さんに役立つ」目的に沿っているかどうかの自信はありません。

ブログ開始以降、周りの環境も変化したこともあり、当初のテンションが低下してきたことは否めません。特に最近は暑いので、自宅のACなしのPC部屋であまり長居をしたくないことも外的環境要因です。


←この写真を見て、せめてもの暑さしのぎに役立てばと思います、、、
雪の上のネコ。本当は、コタツで丸くなりたかったのかも。







当初の路線に戻せるようなネタで更新を目指したいと思います。

2013年7月6日土曜日

「Waking Up Married」 Mira Lyn Kell

 今回読んだのは、Kindleで無料で読むことのできた、ハーレクインシリーズの一つです。
途中から話について行けなくなりました。理由のひとつは比較的難しい単語が登場する頻度が高かったからではないかと思います。他の理由は序盤で登場人物が3人を超えたので、誰がだれだか混乱したためかもしれません。

このシリーズは他も似ているかとは思いますが、女性が読めば素敵な妄想の世界へと誘ってくれることでしょう。特に心理的な描写については女性のほうが共感できる点が多いのではないかと思われます。(書き手も女性読者を想定しているのでしょう。)

 「朝、目覚めたらよく分からないヒトと結婚していた」というスタートは、この手の物語では典型的なのでしょうか。洋画でも、同様の展開で話の始まるキャメロン・ディアスが主演のコメディを思い出しました(邦題:ベガスの恋に勝つルール。原題:What Happens in Vegas。)話の始まりは似ていますが展開は違っています。



せっかくなので、個人的に気になった表現のいくつかを原文の部分とともに以下に示します。

■knickknacks
She hadn't brought everything to San Diego. Not the furniture. But her keepsakes. Books. Knickknacks.
キンドルの辞書では英英辞典で表示されました。
意味は、a small worthless object, esp. a household ornamentで、
まさに引越しの場面なので「装飾用小物」でしょう。


■wring one's hand
 "Okey," she said, nervously wringing her hands. "I'll be your wife."
絞るの意味ですが、wring one's handで「両手をもみしぼる」の場合、
「じっとしていられないような不安・心配・苦しみ・絶望などのため、強く握り合わせた両手をねじるように動かすしぐさ」を表すようです(*)。


■square one's shoulders
"I'm just confused and overwhelmed and..." She squared her shoulders. "I'm not entirely sure a getting-to-know-you anything makes much sense, all things considered"
「(肩の線がぴんとまっすぐになるように)胸をぐっと張る、背筋をしゃんと伸ばす」様子で、「堂々たる構え;勇気ある決断、一戦を交える覚悟、難事をやり遂げる覚悟など、確固たる心構えを反映する姿勢;張り切って構える様子を表す比喩表現」のようです(*)。
ここの文脈では、「ちょっと居直る」ような雰囲気だと思います。
squareは、四角くするのではなく、まっすぐにするの意味合いだったとは、、、読み飛ばすと細かい部分で誤解することがあるので注意が必要です。

(*)出典:「しぐさの英語表現辞典」小林祐子編、研究社

2013年6月30日日曜日

「養生法」は人それぞれ

先日、たまたまテレビをみていたら、今、流行のアンチエイジングで有名な某医師の生活が紹介されていました。今、50代なのに、30代の写真よりも若く見えるとスタジオで言われていました。で、その人の食生活は、朝がガム一個、昼は果物とナッツと小魚、夜は、普通の食事でした。朝がガム一個でよいのは、水分を取りすぎるとむくむからという理由でした。

水分を多く取れとか、朝はきちんと食べましょうといった、これまでの「常識」とは異なる健康法に興味を引かれました。

「常識とは異なる」といえば、その他のダイエット法や健康法でも「肉を思い切り食べても大丈夫」とか、「炭水化物を採ってもダイエットできる」などの方法が流行ったりします。

なぜ、こんなに間逆なことがまかり通るのか?
 ひとつにはこれまでと同じ方法では目新しさがないからでしょう(世間のダイエットマニアは、新たな方法を渇望しているに違いありません)。
 ふたつめには、「人間は一人ひとりが違うから」なのではないかと考えられます。

朝から元気な人もいれば、午後に元気になる人もいるでしょう。また、睡眠時間が4時間で大丈夫な人もいれば、8時間眠らないと寝不足の人もいるでしょう。同じ人間でも人種の違いもあるし、同じ人種でも環境が違えば条件が違います。

なので、病気になったとしても、どの治療法が効果的であるかは、実際のところ、ヒトによって異なるといえるでしょう。

長生きのためには養生が必要でしょうが、その「方法論」も人それぞれに違っても不自然ではないです。この観点から、以下の本も独自の「養生法」が紹介されています。



「病を克服する」「アンチエイジング」ではなく、病あるいは老化と付き合っていく姿勢が以下の文章に見て取れます。
そもそも病気を「治す」というのは間違っています。病気は「治す」ものではなく「治める」ものなのです。

また、病気の治療に関しては、現代医学の中心である西洋医学と、理屈のすべてが科学的には解明できていない東洋医学について言及しており、
昔、迷信を正すのは、科学や思想の役割でした。(中略)「科学が全部理解できている、ということが、じつは迷信なのではないか」と感じるところは、私にもあります。
と述べています。世の中のかなりの部分は科学的に説明できるでしょうが、全てではないでしょうね(理系人間としては、すべてを説明したくはなりますが、、、)。

「髪を洗う頻度は年4回」には驚きましたが、養生法はヒトそれぞれということですね。


ビジネス書でも「私はこうして成功した」のものがありますが、成功するかどうかはケースバイケースで必ずしも普遍性があるとは言いがたく、養生法もまた然りなのでしょう。

2013年6月23日日曜日

ダリも描いた「神曲(La Divina Commedia)」

滞在先でダリの展覧会をやっていたので行って来ました。ダリといえば、時計が伸びたような絵や、本人の奇抜な容貌が思い出されます。「シュールリアリズム」は、わかったようなわからないような印象です。
今回の展示では、版画が主な対象でした。



その中でダンテの「神曲」に関連したものが100枚ほど展示されていました。しかし、「神曲」の「地獄篇・煉獄篇・天国篇」と言われても全くピンきません。余談ですが、「ダンテ」といって最初に思い浮かぶのは、ソフトバンクのCMに出ていたダンテカーヴァー(http://ameblo.jp/dantecarver/)です。


では、「神曲」を読んでみようと思い立ち、ネットで調べました。青空文庫から無料で電子版をゲットできることがわかったものの、山川丙三郎訳は文語体で日本語にもかかわらず難解と感じられました。いろいろみてみると、平川訳が読みやすそうなので、これを入手すべくアマゾンで注文しました。



アマゾンの優れたところは、自宅にいなくても商品の受け取りができる点で、任意のローソン店舗を注文時に指定しておけば、全国どこのローソンでも受け取ることができます。今回はそのサービスを利用しました。郵便の局留めとほぼ同じですが、コンビニだと24時間受け取り可能で、またその拠点も多い点がよいです。

地獄篇では、罪の種類により各種の刑が用意されている地獄をみてまわる内容で、多少スプラッタームービーを思い出させる内容でした。ただこうした重苦しい内容のなかでも、第21歌の最後では、部下の鬼が舌でベエをした合図に対して隊長鬼マラコーダが放屁で応答するというユーモラスな描写も入れられています。

ネットでの評判通り、平川訳は現代語訳のために本文は読みやすく、また、各章(第1歌~第34歌)ごとに訳註がつけられていて、そこでは宗教的あるいは時代的な背景が説明されているので理解の助けとなりました。ヨーロッパ中世や、ギリシャ・ローマ古典、そしてキリスト教についての知識があれば、さらに踏み込んで内容を楽しめるでしょう(恥ずかしながら、自分は知識不足です)。


煉獄篇、天国篇もこれから読みたいものです。



2013年6月15日土曜日

英語の語彙力向上に楽な道は、、、ない

■英語学習の上で、重要な要素の一つは語彙力です。
地道に単語を記憶していくしかないのでしょうが、年齢とともに記憶力が低下していくことは否めません。

■今朝の日経新聞のNIKKEIプラスワン2面「とことん試します」で、アラフォー記者が英単語学習を試してみた記事を目にしました。
「アラフォーからの英単語学習、専門家に聞いた秘訣は」という内容で以下の5点にまとめられていました:
  1. 丸暗記は非効率。「暗記より推理」と心がけよ
  2. 単語を分解してみよう
  3. 覚える単語を分野別に整理
  4. 復習は高速で
  5. 定着のために、自分なりの「実用」を考えて
スマホのアプリ利用やネットの英語学習サイト利用も紹介されていました。そこで紹介されていた「ウェブリオ」は辞書サービスを提供しており、私も利用しています(http://ejje.weblio.jp/)。英和、和英はもちろんですが、調べた単語を単語帳として保存しておくことが可能です(無料会員では単語登録数の制限があります)。

2については、大学受験の際の単語暗記本にも書いてありました。接頭語や接尾語に分解してみれば、1の「推理」して意味を知ることにつながりますね。

5がやはり重要です。文のなかで覚えた単語の意味をとらえる、あるいは、話す機会があればそこで使ってみると、使用頻度が高まるに従って脳に定着するでしょう。
逆に使用頻度の少ない単語を長らく脳内の記憶に定着させておくことは難しいでしょう。

 私の場合、単語を記憶する「作業」はつまらないので、ここのところ、キンドルでペーパーバックを読んで語彙を増やそうとしています。日常的に使われているような単語で知らないものに遭遇するので、それなりの新鮮味があります。わからない単語をタッチするだけで意味が表示されるので、別途辞書を用意する必要もなく電車の中でも読み進められます。


■結局、「何のために」単語力を高めたいかで、アプローチも変わってくるでしょう。
英語を使う場面を考えると、語彙が豊富でなくても、話したり書いたりする際には平易な表現に言い換えれできれば切り抜けることができます。
ただ、問題は、特に話している場面で「難しい言葉(概念)」を「(自分の語彙力でカバーできる)やさしい言葉」で素早く表現できるかという点です。例えば「官僚主義」(bureaucracy)を平易な英語で説明できるか?と考えると、たぶん無理です(英語で「官僚主義」を説明できる人は、bureaucracyという単語を知っている語学力があるでしょうねw)。

となると、聞いたり読んだりする場合にもっとも語彙力がきいてくることになります。やはり、「言い換え」ができるにしても、語彙力があるに越したことはないです。

ある程度の速さで語彙力を高めるには、「楽しくやれる方法」を見つけるほかに、地道な暗記作業も必要なのでしょうね。


2013年6月8日土曜日

「その言い方が人を怒らせる」 加藤重広


 言葉を話すとき(日本語ですが)、自分の意図を違う受け止められ方をしてしまう、あるいは「ニュアンス」が伝わらないことがたまにあります。また、最近では、メールで情報を伝えることが多くなり、さらに「ニュアンス」の違いを正しく伝えることが重要な時代になったと感じます。メールではその「文字情報」しか伝わらないので、書くのに苦労することが多いです。特に、上司へのメールの場合には細心の注意が必要だと思います。自分の伝えたいことを書くことはもちろんですが、それを読んだ相手が「どのように受け止める」かまでを考えて文章を書く必要があるからです。
 勝手な推測ですが、メールの時代になって、文章力がそのまま仕事の能力に直結する時代になったのではないかと思います。(ビジネスメールでも絵文字やemoticonが使えれば、もう少し気苦労がなくなるかもしれませんw)。

 空気の読める、読めない、あるいは謝罪の言葉に対して「謝罪していない」と怒り出すのはなぜか?ということなどを丁寧に本書では説明しています。また、日本語が「が、」で言葉をつjなぐ理由や、「私って○○じゃないですか」の裏に潜む話者の意図を解説していて面白いです。

日ごろの発言に対して「空気読めない」と指摘されている人にとっても本書は役立つでしょう。具体的な例も多く紹介されています。

細かいニュアンスがてんこ盛りの「日本語」がいやになるときもありますが、逆にニュアンスを表す幅が大きいからこそ日本語はすばらしいとも言えます。
英語でも、細かい違いを示せるとは思いますが、どの程度可能なんでしょうか。おそらく、例えばここで書いた日本語のブログの内容を、「同じ」ニュアンスで英語に翻訳するのはかなり難しそうです。

英語であっても、本書と同じような内容の本が成立可能かどうかは興味あります。

2013年6月2日日曜日

グループレッスン(スカイプ英会話)について考えてみる[2]

前回の続きで、O社のグループレッスン(GL)に対する考察です。


■この前までは、GLは会員以外でも参加可能でした。会員以外に対して「お試し」を無料で開放することは十分に意義があったと思います。
今では、会員限定となりました。これはビデオ使用の布石であったかもしれません。つまり、会員以外でも参加できると、問題のある参加者(例えばスカイプで参加者のビデオから入手できる情報を悪用するような人)を除外するのが難しいからでしょう。(あくまでも推測。)

■GLの費用は「見かけ上」無料ですが、実際は授業料の一部が充てられていると予想できます(先生が無給でやっている可能性も否定できませんが、それは考えにくい)。そうであれば、GLの恩恵は、できれば会員に等しく分配されるべきかもしれません。
GLが無料であることが、一番の動機付けであると書きましたが、それを証明するには「有料化」すれば明らかになるでしょう。

例えば、通常チケットの20%の料金にGL設定すれば(5人参加の前提で1/5という計算)、ひとコマあたりの収入は同じになります。(ただし、参加者5名未満では、必ず赤字。)ただ、PLよりも割安にすると料金設定が複雑になり管理が難しくなります。(有料であれば、いろんな苦情を言いやすいメリットはありますが、、、w)。


■意外と「GLの人気が無い理由」を考えてみました。
①GLの時間が合わない
 →特に土曜日11:00のGLは参加者が少ない気がします。

②対象分けが「B2、B1、A2とA1」だが、どこに参加したらよいかわからない。
 →オフ会でこういう声を耳にしました。

③GLで恥ずかしい思いをしたくない

④GLよりはPLで効率的に時間を使いたい

③と④はシステムをいじってもどうにもなりませんが(w)、①と②は運営者が手を入れる余地がある点だと思います。

■いろいろと述べてきましたが、すでにOWスタッフによって今後のやり方が検討されているのでしょうね(たぶん)。

2013年6月1日土曜日

グループレッスン(スカイプ英会話)について考えてみる[1]


スカイプでの英会話を続けています。そこでのグループレッスン(以下、GL)に関して以前のエントリーでふれました。

■GLでもっとも自然なパターンは、誰もが話の途中で反応できる状況でしょう。で、これができるためには、相手の様子が見えないと無理な気がします。要するに、音声だけだと、会話に割り込むタイミングや適切なリアクションが難しいのではないかと。

GLでも結局は先生と生徒の1対1の対応が基本となってしまうのは、スカイプで音声だけであれば、自然の道理だと思います。と言いながらも、実はGLでビデオを使うという試みが数回なされましたが、その後行われていません(たぶん)。
その理由を推定してみると、
 ①一部の参加者から「ビデオで顔を出すのはまずい」という意見が上がった
 ②GLの最中に先生が他のことで忙しくしているのが明らかになるのが不都合だった
 ③ビデオONでは回線が重くなる

もちろん②はないと思いますが(w)。やはり①のような気がします。知らない人に顔まで晒すのは、特に女性は嫌がるかもしれません。

結局、その数回では「自然なパターン」ではなかったのですが、もう少し継続していれば変化あったかもしれません。


■その後の変化としては、J先生のGLが、プライベートレッスン(以下、PL)ぽくなってきました。
だいたい、こんな流れです。

短い記事の音声のみを聞く(3回)

Yes or Noの先生の質問に答える

もうちょっと詳しい質問に答える

記事の全文のテキストを読む

段落ごとのsummarizeあるいはparaphrasing

これを複数の生徒でやるからGLなのですが、生徒一人ではそのままPLです。で、違いは何かといえば、自分の聞き取り能力や語彙が劣っているのことが実感できます。逆に他のひとが聞き取れない点を自分が聞こえてたりすると少し救われます(稀ですがw)。

「ではなぜGLなんだ?」ということですが、「無料だから」でしょう。

昔、某○EONのリアル英会話にお世話になってました。そこでは、当然ながら少人数GLのクラスをとっていました。なぜか?PLはGLよりも費用が高かったからです。


■今回のまとめ
・GLに自然な会話の流れを組み込むのは難しい
・GLの参加の動機付けは費用によるところが大きい(かなり主観的な意見ですが)


次回は、別の視点から考察してみたいと思います。

2013年5月26日日曜日

「空気の研究」 山本七平

ここでいう「空気」は、時代のムードとも言い換えられ、「空気」が決定に影響した例として、「戦艦大和」の出撃の話が取り上げられています。どうみても無謀な出撃は、その決定時に漂っていた空気に逆らえなかったためだというのは周知の事実でしょう。

空気は強固で絶対的な支配力を持つ「判断の基準」であり、決定に際しては論理的判断の基準のほかに「空気が許さない」というような空気的判断の基準が適用される、と述べています。

空気の支配を断ち切るには、対象を相対化することが一つだと述べています。逆に言えば、対象を絶対化すると空気の支配が起こるということです。その例として公害問題について、公害対策基本法の改正で「経済の健全なる発展との調和」のくだりが削除されたことを挙げています。すなわち、経済の発展と、公害問題という2つを対立する相対的概念で捉えていたものを、前者を削除することで公害を絶対化してしまい、公害という問題を解決できなくなると述べています。公害が絶対化されると、公害をなくすために工場を全閉鎖しろという空気が支配的になり、仮に工場が一掃され公害がなくなっても、「公害問題」は解決しないということです。

空気が形成される背景として宗教的な点を指摘しています。つまり、一神教の世界では一神が絶対化されているので、他のすべては相対化されるが、日本はアニミズムの世界なので相対化がなく絶対化の対象が無数にあると述べています。宗教的な背景から空気を説明できる点は興味深いです。



今回、かなりの時間を要しましたが内容の理解は正直なところ不十分でした(「臨在感的把握」はキーワードのひとつですが、ピンと来ませんでした)。本書の内容は「「空気」の研究」、「「水=通常性」の研究」、「日本的根本主義について」の3つから構成されていますが、今回は最初の「「空気」の研究」だけです。
まずは、聖書の知識や、共産主義思想、第2次世界大戦での日本の状況についての背景知識を持っていないと内容を理解するのは難しそうです。基礎知識を仕込んでから再度チャレンジしたいと思います。

2013年5月25日土曜日

蔵書のミニマリズム作戦(その2)

以前のエントリーで、蔵書ミニマリズム作戦について述べました。
今回はその経過です。

本を減らす方法として、以下の2つで進めました。

1.中古として処分する(=「BOOK-OFF」へ依頼)
もはや読むこともないだろうという本、そしてたぶんゴミにしかならない本が該当

2.電子化して元の本を処分する(=「BOOKSCAN」へ依頼)
見返す頻度の低い本や、かさばる本が該当


1のブックオフオンラインでは、買取235冊、査定ゼロ円での引き取り66冊となりました。

ブックオフオンライン【PC・携帯共通】

以前も書いたとおり、送料無料で引き取り依頼ができる点がよいです。しかも、大きな声では言えませんが、たぶん「ゴミ」だろうという本も一応引き取ってくれるもよいです。こちらを利用したおかげで、「資源ごみ回収日」に、収集場所にまで持っていく手間を省けて助かりました(特に引越してからは、資源ごみ回収場所まで100m以上も離れており、かなり不便)。
買取価格が気に入らなければ、そのまま返却してもらうこともできます(だたし送り返してもらう送料負担要)。できるだけ高く売りたいならば実店舗のブックオフに持ち込んだり、他の中古買取業者と比べるのがよいでしょう。


2のブックスキャンで374冊を電子化しました。
プレミアム会員で、9800円で月50冊(ただし350ページ以上は2冊としてカウント)が電子化可。50冊を超えると割安料金が使えないので毎月50冊程度のペースで進みました。
キャンペーンで2回分くらいは送料無料でしたが、通常は送料負担です。ざっと送料を1200円として、一冊220円(=[9800+1200]/50)の費用がかかりました。したがって、電子書籍版が200-300円程度で入手できるなら、ブックスキャンのサービスに頼らなくてもよいでしょう。
ブックスキャンのサービスではPDF化したファイルをさらに各端末で読みやすいようにフォーマットできます。しかし、所詮はPDFなので、特に(画面の小さい携帯田端末で)拡大して読むと読みやすいとはいえません。個人的には、電子書籍ならば端末で、PDFファイルはPCの大画面で見たほうが読みやすいと思います。


蔵書の「物理的な」減量を進めることができたので、あとは、物理的に増やさないことを心がけたいものです。

2013年5月19日日曜日

猫にきびとその対策




ついに猫ネタ登場です。もちろん我が家の同居ネコです。
写真のように、年明けにブツブツが発生しました。
猫にきび(黒いぽつぽつ)がアゴの下に見えます
口元にはでかめの黒いブツが見えます
こんな感じで発生です。見た目だけの問題ならよいのですが、たまにかきむしられて出血しているのが困ります。

あごの下の皮脂が酸化して黒くなるらしいのですが、ネットで調べても、その真の原因は不明らしいです。えさの種類やストレスとか言われています。あとは清潔に保って予防できるとか言われてます(人間のにきび予防と同じ理屈でしょうね。)

タオルにぬるま湯を湿らせてこすり取るという方法もあるようですが、かなりしつこくくっついています。そこで、いらなくなった歯ブラシでブラッシングしてみると、うまくとれました。

使わなくなった歯ブラシでアゴ下を
ブラッシング



ブラッシング後にお休みの図
あとはえさをいれる皿の材質も影響するという話もあるようです。プラ系だとアゴにあたってそこが不潔になるのでよくないとか。真偽のほどは不明ですが、私のところもえさ皿の材質をプラから磁器製に変えてみました。
かきむしられて出血していなければ、あまり神経質になる必要はないでしょう。

2013年5月18日土曜日

「The Cat That Tamed a Flame」  James D. Maxon

通勤電車で少しづつ読んだKindleペーパーバックです。

森の火事を何とかするために、オオカミから助けを求めて呼び出されたネコSamuelが火消しのための旅に出て、その道中で飼い猫では味わえない経験を積むというストーリです。
「put out a flame」ではなく、「tamed a flame」という表現は、実は炎自体も擬人化されているので、しっくりきました。(まさか、flameまで人格が付与されていたとは思ってもみなかったので。)
「最後に森の火事も鎮火して、めでたしめでたし」というエンディングを想像していたのですが、その予想が裏切れれた点がおもしろかったです。前述のように、tamed a flameのニュアンスを正確に理解できていれば、結末での驚きは少なかったかもしれません。

ネコのしぐさに対する描写が何回か出てきます。ネコ好きの立場として、それらのしぐさを想像できるので、そのことも手伝って割と話の中へ没頭できたのではないかと思いました。

  kindleのカテゴリーでは、Children's Books > Literature > Fairy Tales, Folk Tales & Myths に入っていますが、ネコ好きであれば大人でも楽しめるはずです。


先月は無料で入手できたのに、今日(5/18)現在では¥300となってます。そのうち、またキャンペーンで安くなる日が来ることを期待しましょう。

2013年5月12日日曜日

「憂鬱でなければ、仕事じゃない」 見城 徹, 藤田 晋

一つの「お題」に対して、見城徹→藤田晋の順に見開き2ページづつで意見を述べるスタイルとなっています。それぞれが「経営者」としてのビジネスに対する見識を述べていますが、意見が逆のこともあります(「切らしえて渡せなかった名刺は速達で送れ」のお題が顕著な例です。)彼らの年齢およびインターネットへのかかわりかたの違いでしょう。
私が気になったものを以下紹介します。


■小さいことにくよくよしろよ
「頼まれ事はちょっとしたことでもきちんとこなすこと」や「借りた恩は、たとえ小さくても返す」といった些細なことが、ビジネスでは重要と述べています。結局、人間がかかわっている限り、義理と人情は大切です。


■「極端」こそわが命
見城氏は、
「極端」であれば振り切れており突き抜けたオリジナリティーがある。だから、明快で新しい。
と述べており、そのためには「圧倒的努力」をするしかないと述べてます。
「圧倒的努力」とは、以下のことと述べています。
人が寝ている時に寝ないってこと。
人が休んでいる時に休まないってこと。
どこから手を付けていいかわからない膨大なものに、手を付け、最後までやり通すこと。
最初の2つは時間的な努力ですが、3つめは以前紹介した電通鬼十則を思い出させます。

■これほどの努力を、人は運という
ビジネスの成功に対して、時として人は「運がよかったせいだ」と評することに対して、それは「運」ではなく、圧倒的努力(上述)があってこその結果なのだ、と述べています。
藤田氏は、
「運がいい」とは「先見性がある」と言い換えられるのではないかと述べ、
その「先見性」の正体を、
実は物事を先送りせず、短期的に何かを犠牲にしてでも、努力してきた結果に過ぎないのではないか
と言っています。
「極端」であること、人から「運がいい」と言われる結果を残すこと、いずれも、「努力」なくしてはありえないと結論付けられるでしょう。


■憂鬱でなければ、仕事じゃない
見城氏は、
楽な仕事など、大した成果は得られない。憂鬱こそが、黄金を生む
そして、悩んで憂鬱となる限界を超えるには
「暗闇の中でジャンプ」するしかない
と述べており、さらに「人生は暗闇の中のジャンプの連続」と表現しています。「迷ったときは、前に出ろ」という彼の信条を別表現したものでしょう。電通鬼十則の「4.「難しい仕事」を狙え、そしてこれを成し遂げるところに進歩がある。」と通じるものがあります。
「やさしい」道と「困難な」道の選択の岐路に立ったとき、「困難な」ほうを選択するのは実際には容易でないと思います。その裏には「圧倒的努力」ができる自信があるからかもしれません。

ただし、ここでの「憂鬱」は「困難さに対する悩み」や「考え抜く苦しみ」の意味合いで使っていると思います。(本当に憂鬱だと、そのうち鬱病になる危険性があります。)


■刺激しなければ、相手の心は掴めない
見城氏は、
難攻不落の相手とコミュニケーションを取る際の基本として、自分ではなく、相手のことを言え
と述べており、藤田氏は、
初めて会った時の自己紹介で、自分ではなく相手のことでハッとさせられる一言を言えるかが重要だ
と述べています。
これらを実行するには、事前に相手のことをよく調べておく必要があります。また付き合いが長くなれば相手のわずかな変化も見逃さないことが重要でしょう。別のお題の「天気の話でコミュニケーションを図るホテルマンは最低である」で、天気の話を持ち出すような安易なコミュニケーションではなく、おざなりでない観察や心遣いに基づいて話しかけなければ相手の心に届かない、という指摘に共通すると思います。
コミュニケーションで相手に興味をもち根本思想を理解する大切さは、以前のエントリーで触れました。「相手をよく理解する(ように努める)」ことは共通しています。



分野の違う二人の経営者が、同じテーマ(お題)に対して書いている点が、単著ものとは違う特色を出しています。

2013年5月11日土曜日

「あなたの話はなぜ通じないのか」 山田ズーニー

文庫本の初版が出たのが2006年です。私がこの本を買ったのもそのころだったと記憶してます。
ずいぶんと久しぶりに読み返しましたが、コミュニケーション力アップ本として良書であることを再認識しました(だからこそ、未だに重版されているのでしょう。)

本書で指摘している一番のポイントは「自分のメディア力を高める」ことに尽きます。
ここでの「メディア力」とは「信用(信頼)力」と、「自分という人間の中身を、きちんと相手に伝えるチカラ」と言い換えることができるでしょう。

「メディア力」は、時代性とか、運とか自分でどうにもならないものもあるが、
日ごろの、立ち居ふるまい・ファッション・表情。
人への接し方、周囲への貢献度、実績。
何をめざし、どう生きているか、それをどう伝えているか? 
によって形成されると述べています。

「メディア力」の大切さは、「何を」伝えようとしているかよりも、「誰が」伝えようとしているかで受け手の反応が異なるという事実からも明らかでしょう。「誰が」のメディア力が低ければ伝わらないということです。同じ記事を「日経新聞」が伝えるのと「スポーツ新聞」が伝えるのとでは、後者ではあまり信憑性を持った記事として受け入れられない例が挙げられています。

また、「人は中身をよく知って判断されるのではなく、その人の情報で判断される」からこそ、「メディア力」が重要だと述べています。通常、その人の「内面」ではなく印象や周囲の評判で判断されることから、「自分がどう見られているか」という点をよくすることが重要だということです。そもそも、「他人」を内面から理解するには、相当の時間を要することは間違いないでしょう。
「自分」を伝えようとするには自己アピールは重要ですが、アピール下手であれば無理する必要はない、むしろ「謙虚」という点を生かすべきとも述べています。

根も葉もない噂が立った時に、変に釈明しても納得してもらえない、その理由はその時点で当人のメディア力が低下しているからだという見方は面白いです。(だからそんな時は、メディア力のあるスピーカーの援助が必要だと述べています。)


会話のコミュニケーションで重要なこととして、相手の「根本思想」を理解することを挙げています。「根本思想」とは、その人を発言に向かわせている動機・想いのことです。つまりは言葉では表されていない言外の意図や意思を「汲み取る」、あるいは「察する」ことが重要であるといえます。
超能力者でもない限り、相手の心を読むことは不可能です。しかしその相手が職場の同僚など近い人であれば、普段から相手に興味を持って接することで、多少は意図を読みやすくなるのではないでしょうか。「好き」になる必要はないですが、「無関心」では根本思想の理解はままならないでしょう。

「メール」で伝わらない、どうしたら伝わるかについてもわかりやすく解説されています。具体例が多く紹介されている点で実用的です。
論理的に話す、聴く技術については他の本と書いていることに変わりありませんが、やはり実用的な知見からまとめられています。

2013年5月6日月曜日

図書館限定の「アジアの現代文芸」シリーズ

先日、市立図書館内で本を物色していたところ、「アジアの現代文芸シリーズ」という書籍群を発見しました。本屋では見かけない本です。このシリーズの中で、「現代タイのポストモダン短編集」を借りて読みました。
文学作品なためか、話のオチがあるというよりは、読んだあとでいろんなことを想像させる短編だと思います。また文化的な背景をある程度知らないと、読んでいても想像を膨らましにくいかもしれません。

このアジア現代文芸シリーズについて調べてみたところ、市販品ではなく、「大同生命国際文化基金」が事業の一環として出版して図書館などに寄贈しているようです。どうりで本屋で見かけたことがないわけです。

http://www.daido-life-fd.or.jp/business/publication/publish
(HPから、以下一部を抜粋)

アジア諸国の現代文芸作品の日本語翻訳出版「アジアの現代文芸」シリーズ
アジア諸国の現代文芸(小説、詩、随筆、戯曲、評論)の内、わが国への紹介が望まれるものを選考のうえ、翻訳・出版するもので、アジアの国々の今日の姿をそれぞれの国が生んだ文芸作品を通じて理解することを目的としています。
より多くの文学ファンの眼に触れてもらうことを目的に、2012年度から新刊・既刊の電子書籍化を行ってい
ます。





さらに一部は電子書籍として読むこともできます(無料です)

「大同生命」の回し者ではありませんが、こんなにすばらしい事業を展開しているとは知りませんでした。
今回のような思わぬ発見もあるし、本を借りるなら自宅の収納スペースを心配しなくてよいので、今後図書館を活用したいです。

2013年5月5日日曜日

「不機嫌な職場」 高橋克徳+河合太介+永田稔+渡部幹

相互に協力することが少なくなった「不機嫌な職場」に対する考察とその解決案が述べられています。

個人の仕事で手一杯で、他の人に協力することができなくなり、しまいには精神を病む人を生み出すギスギスした職場を生み出す要因は何か、以下の3つを挙げています。

1.仕事が細分化、高度化することにより、部、課、あるいは個人の業務単位内でしか仕事が見えなくなった。
*「タコツボ化」と表現されています。「セクショナリズム」と言ったほうがわかりやすいかもしれません。)

2.社内でどんな人がいるのか、組織内で個人の「人となり」を共有できなくなった。
*「評判情報」が共有が難しくなったと表現しています。協力を要請するにしても、依頼する相手がどんな人間か(仕事以外の面も含めて)知っていれば協力しやすいですが、それができない状況です。

3.インセンティブが効かなくなった。
日本の従来の雇用体系では、金銭面以外にもインセンティブがありました(例えば長期的雇用の保障。)平たく言えば、会社に忠誠を尽くせば何とかなっていたということです。その状況がくずれると社員間での協力も後ろ向きになります。


1.に対しては、以下を提案しています。
  • 共通となる目標や価値観を設定して共有化する(共有化の工夫が大事)
  • 発言や提案に対して壁を作らない、さらにそれらの発言や提案をまじめに取り上げる
  • 特定人しか仕事内容がわからない状況を避け、周りが手伝いやすい環境をつくる

2.に対しては、「会社でのインフォーマル活動を見直す」ことと、さらに活動を機能させるために「面白く」するを提案しています。
具体的には、社員旅行や会社の非公式行事を活用することです。
私の経験でもインフォーマルなネットワークを社内で持っておくことは、仕事を速やかに進めるのに有効です。よく知っている相手であれば、「3」の効力感も高まるでしょう。
一方で、仕事とプライベートをどう切り分けるか(切り分けるべきか)という議論もありますが。


3.に対しては、
これまでとは別のインセンティブ、「効力感という感情を与える」ことが必要である(効力感=手ごたえ=「相手から真っ当な反応が返ってきた」そのときの心地よい感触)
と述べてており、「効力感」は、反応が感謝や認知であればより助長されると述べられています(認知=他人を認める応答=「この人すごいよ」といってもらえること。)そうした例はインターネットの世界で見られます。例えばネットの掲示板で困ったことを書けば、助けてくれる人や情報をくれる人がいますが、彼らの行動の原動力となっているのは金銭的なものではなく、効力感が得られることなど精神的な面が大きいでしょう。

現代は「認知飢餓社会」であるために、「学校や会社よりもネットのほうが楽しく生きがいを感じるといってはまっていく姿はそれを象徴している。」という考察はそのとおりと思います。現実世界が認知を受けにくくなったこと、さらに、ネット上では認知を受けやすい世界であることも要因だと思います。

協力し合える組織として「グーグル」、「サイバーエージェント」、「ヨリタ歯科クリニック」の例が紹介されています。ネット産業のようなクリエイティビティを重視する組織と一般の製造業では状況は異なりますが、参考にはなるでしょう。

「2」と「3」については、職場という内向きな場所だけではなく、例えば起業して独立する場合にも適用できるポイントだと思います。

2013年5月4日土曜日

「希望の仕事論」 斎藤 貴男

サラリーマンなら「独立」することを考えたことがあると思います。
会社に入る前から「そのうち辞めて独立」と計画している人もいる一方で、サラリーマン生活がいやになって「独立でもするか」という人もいるでしょう。(まだ後者が主流ですかね。)

本書では成果主義が日本に導入された弊害と、会社を辞めて独立することの良し悪しを中心として、著者の、記者からフリーランスのジャーナリストになった経験が語られています。
「独立」といっても、「コンビニ経営」はやめといたほうがよいと、データをもとに解説しています。
また、やみくもに「独立」を勧めているわけではなく、会社勤めで吸収できることを吸収してスキルをあげることができたら独立してもいいし、そのまま会社勤めでもよいと述べています。

雇われの立場であれば、人間関係やもろもろのストレッサーで悩まされることが多いでしょうが、会社員だからこその利点もあります。ハード面では、パソコンや印刷を使わせてくれるし、また、必要な本や資料も入手できます。また、ソフト面では、何か困ったことがあれば、基本的に「タダ」で教えてもらえます。例えば、パソコンの操作でトラブっても同僚に聞いて解決できるはずです。このサービスを外注するとそんなに安くないです。たぶん、会社を辞めてはじめてこうしたありがたさに気付くのしょう。(出所は忘れましたが、同様のことが他の本に書いてあった記憶があります。)

「社内ベンチャー制度」があれば、雇われの利点を生かしつつ、完全独立に付随するリスクを少なくできるので魅力的です。ただ、最近はこの制度もあまり耳にしなくなりました(ちなみに、"entrepreneur"対して"intrapreneur"と呼ばれるようです。)


「独立するかしないか」の二元論に陥るのではなく、「自分が何をしたいか」ということをベースとして独立するかどうかを選べばよいと思います。ただ、本書の最初で成果主義の功罪に言及しているように、会社に長居しにくくなった時代では、独立への圧力が高まっているでしょう。

2013年5月3日金曜日

最近読んだkindleペーパーバック

kindleのペーパーバックは通勤中に読んでいます。
今回は3冊(いや、電子版だから3ファイル?)まとめて紹介します。
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「Girl of My Dreams」 Morgan Mandel




大まかな筋は以下の通りです。
大金持ちの恋人候補を選ぶためのテレビ番組で企画されたコンテストに、急遽、番組プロデューサーのアシスタントの女の子が人数の埋め合わせのために引っ張りだされます。数合わせのためだったにもかかわらず、順調に最終ラウンドまで残ったものの彼女は、そのお金持ちではなく、実は番組プロデューサーに心引かれていたのです、、、
(注)いつものことですが、細かい部分は違う可能性がありますのでご容赦ください(笑)。

話の筋からすると、ティーンエイジャー向けでしょうか。

ペーパーバックをよく読んでいるかたには、ちょっと物足りないかもしれません。私の場合、英語小説はほとんど初心者なので、ちょうどよい感じです。


人との会話や接触する場面が小説にはでてきます。基本的に小説にはなじみがなかったので、通常であればよく使うのでしょうが、単純だけど知らない単語に出くわします。
例えば"beckon"なんて単語をこれまでほとんどみたことなかったです(恥ずかしながら)。

文脈のなかで単語の意味を記憶したほうが、単語単独記憶するよりもまだ楽なので、ペーパーバック(kindle版ですけど)を読んでいこうと思います。
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「Bra, Humbug! Holiday Tales for Troubled Times」 Lulu Dean


クリスマスシーズンに絡んだ、短編エッセイのような物語です。かなり笑えます。
私の入手したのは「お試し版」だったらしく、全部は読めませんでした。
Humbugはnonsenseやケチなどの意味があります。よく調べてみると、タイトルに入っている「Bra, Humbug!」は、「クリスマスキャロル」に登場する Ebenezer Scroogeが言った「bah, humbug!」のパロディーだったのですね。知りませんでした。(銅メダル英語であれば知らなくてもOK?)
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「How to Date a Werewolf (Rylie Cruz Series)」Rose Pressey 


Werewolf(おおかみ人間)ものです。主人公Rylieは女性なので「狼男」とはいえないです。
Rylieは、通常は普通の人間ですが、感情がコントロールできなくなるとwerewolfに変身します。人間に戻った時に伸びた毛が残るので、常に剃刀をバッグに忍ばせているのには妙なリアリティーを感じました。加えて、服を着たまま変身すると服が破けてしまうとは、、、他のwerewolfものではこの辺のリアリティーがどうなっているかが気になりました。
ストーリーは主人公が「人間」と恋におちるのですが、他の狼男、そして何者かからの脅しも絡んで展開します。
が、ネタばれ覚悟でいうと、十分なオチがない! たぶん、このRylie Cruz Seriesの続編を読まないとわからないのでしょう。ストーリーにあまり関係なかった主人公の親戚も、続編での伏線なのでしょう。1冊でオチがなく続編に誘導するとは、うまい商売をするものです。
読み始める前に、続編まで読むかどうかを決めておくことをお勧めします。

2013年5月1日水曜日

「パブリックスピーキング―人を動かすコミュニケーション術」 蔭山 洋介

プレゼンの技術について興味がありこの本を買いました。プレゼンよりもスピーチに役立つ内容だと思います。

「パブリックスピーキング」の語訳は「話ことば」ですが、以下のように定義されてます。
普段の話し言葉を使って人前で話すこと、またはその技術
スピーチ、プレゼン、講義も広義のパブリックスピーキングですが、「普段の話し言葉」を使う点が特徴です。だからオバマ大統領のスピーチやスティーブジョブズのプレゼンはこの範疇に入りますが、校長先生の原稿を読む朝礼の講話は含まれません。


パブリックスピーキングの構成要素は「演出」「シナリオ」「演技」の3つです。

「演出」に関しては、他のプレゼンテーション本で書かれていることとあまり変わりません(例えば、会場のライティング、マイクの調整など)。


「シナリオ」については、以下の構成が紹介されています。
あいさつ
アイスブレイキング
フレーミング
事実/事件
意見
まとめ
事件での内容の構成が、ドラマツルギー(作劇法)の手法そのものである点は「なるほど」と思いました。すなわち次の順序のようなドラマの流れです。
日常→事件→非日常→解消→新たな日常
また、自分が追体験するように話せば面白くなると述べています。その時さらに、擬音を入れる、実際の言葉をいれる、語尾表現を「ました」ではなく「たんです」とすることが効果的であると言ってます。
スピーチで話す場合に、AをBのようにすると、話し言葉として生き生きするのがわかります。

A
車を運転していたときです。前方の片側2車線の分離線に黒い何かが落ちていました。そこを避けて通り過ぎる際に見たら子猫のようでした。車を路肩に停めてその子猫を保護しました。自宅に連れて帰りましたが、先住猫は威嚇するし妻は反対するしで困りました。しかし、最終的には職場の猫好き同僚が引き取ってくれました。

B
車を運転していたんですね。で、前方の片側2車線の分離線に黒い何かが落ちていたんです。「タイヤが乗り上げたらいやだな」と思って避けて通ったんです。そのときよく見たら、よろよろして歩いていた子猫だったんです。「他の車にひかれたら大変だ」と思って保護したんですが、うちに連れて帰ると先住の飼い猫は「シャー」って声出して威嚇するし、妻は反対するし困りました。しかし、最終的には職場の猫好き同僚が引き取ってくれたんです。ほっとしました。
(注:なお、この子猫保護の話は実話に基づいた構成です。)


「演技」のコツに関しては、プレゼンの基本と重なる部分もありますが、目新しい点もありました。それは、
感情をこめて話そうとするのではなく、自然に沸き起こる感情を使って話せ
という指摘です。そのためには、
1.大げさに表現することに慣れる
2.感受性を鍛える
「1」の例を考えると、「満天☆青空レストラン」の宮川さんの「うまーーい!」です。彼は番組で食べる料理の味について、「うまーーい!」の一言しか言いませんが、自然な感情として伝わってきます。

「2」は、難しそうですが、具体的な方法として「発見と伝達を繰り返す」ことを勧めています。
例として「笑いの感受性」であれば、日ごろから「何か面白いことはないか?」と考えながら過ごして、面白いことが見つかったら(=発見)、それを身近な人に話してみる(=伝達)方法を示しています。個人的には、好奇心を失わないことも大切だと思います。
また、ひとつの専門分野を極めることも感受性を鍛える上で重要と述べています。身近な例を考えてみると、自分の趣味など特定の分野にのめり込んでいるひとが「熱く語る」状況じゃないかと思います。


パブリックスピーキングの技術は、演劇の技術の応用だとまとめることができます。そう考えると、レーガン大統領やシュワちゃんが政治家に転身できたのもわかる気がします。

上述のAとBを比べると、何だかBのほうは「落語」っぽい印象があります。演劇以外に、落語の技術でもパブリックスピーキングに応用できそうですが、誰か(桂文珍とか)落語家がこの手の本を書いていても不思議ではありませんね。

2013年4月29日月曜日

「お金じゃ買えない」 藤原 和博

著者はバブル期をリクルート社で迎え、メニエル病となってから会社(仕事)と私生活の関係を見直した経験から、今で言うところの「ワークライフバランス」の考え方を述べています。その後、東京都で義務教育初の民間人校長として杉並区立中学校の校長に就任し、また、テレビで見かける機会も多いです。

著者がバブル期に美術品蒐集にお金をつぎ込み、また、仕事に没頭して時間を奪われていたそれの反動から、お金で買えない「見えない資産」の重要性を説いています。バブル期を知っている人には懐かしく、知らない人には新鮮かもしれません。著者の半生を知ることができます。


フランスに住んでいた経験から、フランス人の生活信条"Art de vivre" (アール・ド・ヴィーヴル)、すなわち、
国よりも、産業社会よりも、自分自身の人生と人々との関わりを大事にする生き方
を勧めています。しかし、そんな生き方が日本に馴染むのは難しそうにみえます。なぜなら、日本とは文化的歴史的背景が異なるからです。日本のかつての近所との関わりの強かった時代の生き方と、アール・ド・ヴィーヴルとはまた違うんだろうなあと想像します。生き方を考える上では、日本とは違った見方を知ることはとても役立つと思います。


「時間感覚」についての部分で、
「10年先の夢を実現するために、その夢を、今に、1割だけ紛れ込ませる」
と具体的に述べています。
この考えがすばらしいのは、以下の2点です。
 (1)今やっていることを直ちにやめるわけではない.
例えば「明日から作家を目指すので、会社辞めます」といっても、リスクが大きいです。(経済的な拠り所があれば別ですが。)
 (2)今と10年先を結びつけて夢に向かっていくことができる.
将来を夢見ても、そこに具体的につながることが「今」なければ、その夢は、来年も再来年も、永遠に手の届かない「10年先」の夢だからです。


あれもこれも買ったりやったりするmoreをやめて、自分の持ち味を生かすためのcoreを見つけるor作り出そうと述べています。moreをやめるのは「ミニマリズム」に通じるものがあります。
精神的な豊かさと物質的な豊かさについては、最終的には個人の価値観によるでしょう。(私は身軽さを求めたいので、物質的な豊かさにはこだわりたくないです。)

「ワークライフバランス」を考える参考になる本です。

2013年4月28日日曜日

「わかりあえないことから──コミュニケーション能力とは何か」  平田 オリザ

ひきこもりに代表される、コミュニケーションに問題のある若者が増えた背景について教育者の立場から考察しています。著者は劇作家・演出家を出発点として、教育へと携わってきた点がユニークです。

今の就職活動をしている若者は、自立して考え自分の意見を述べる能力を要求されている一方で、「同調圧力」による従来型のコミュニケーション能力、例えば「会議で空気を読んで反対意見は言わない」といった能力を求められており、この「ダブルバインド」が引きこもりやニートの問題の原因のひとつだと述べています。また、コミュニケーション能力が低下したのではなく、全体のコミュニケーション能力が上がってきたからこそ、コミュニケーション能力の低い人が「顕在化」してきているとも見ています。

演劇の観点のみならず、英語や韓国語との比較からも、日本(語)でのコミュニケーションの特徴について考察を加えています。


子供には「対話の基礎体力」が必要だと述べており、それは、
日本では(あるいは相手が日本文化のバックグラウンドをもっていれば)説明しなくてもわかる事柄を、その虚しさに耐えて説明する能力。
異なる価値観と出くわしたときに、物怖じせず、卑屈にも尊大にもならず、粘り強く共有できる部分を見つけ出していくこと。
と規定しています。
ここでの「対話」とは、「2つの論理が摺りあわさり、そこから新しい概念を生み出す」もので、どちらの意見が正しいかを導き出すものではないとしています。対話と会話は異なるものです。対話の重要性については以前にこちらの本で紹介しました。

最近の状況は変わってきたかもしれませんが、基本的に小学校では、伝える相手は日本人を想定しており「話さなくてもわかる」前提で教科が組み立てられているのでしょう。学校教育のなかで「対話」についてきちんと取り上げられていたなら、私の人生ももう少しマシなものに変っていたかもしれません(笑)。



「冗長率」についての考察は興味深いです。
冗長率とは、
一つの段落、一つの文章に、どれくらい意味伝達とは関係のない無駄な言葉が含まれているかを数値であらわしたもの。
であり、コミュニケーションとの関連性については、
冗長率を時と場合によって操作している人こそが、コミュニケーション能力が高いとされるのだ。
と言っています。単に冗長率を低くすればよいのではないと言っている点がポイントで、相手の要求によって、ときには冗長率を高くすることが必要である指摘は新鮮です。なぜなら、大抵の場合、「余計なこと」は言わないほうがよいとされるからです。
冗長率の低い高いについては、NHKの夜7時のニュースと夜9時のニュースの例(前者が低く、後者が高い)が挙げられています。


社会的弱者のコンテクストを理解する能力が、これからのリーダーシップに必要であると述べており、さらに、著者は学生に対して、以下のように言っています。
論理的に喋る能力を身につけるよりも、論理的に喋れない立場の人々の気持ちをくみ取れる人間になってもらいたいと願っている。
ここでは、コンテクストの意味として、「その人がどんなつもりでその言葉を使っているかの全体像」と広く定義しています。
コミュニケーションの手段として「言葉」は重要ですが、それはあくまで伝える手段の一つに過ぎません。「相手の気持ちを察し、気を利かせることの重要性」は、この手の本では共通して述べられていますね。


2013年4月27日土曜日

「人は上司になるとバカになる」菊原 智明


この本では「困った上司」に対して、具体的にどう対処したらよいのかを紹介しています。優れている点は、極めて具体的な例に対して、具体的かつ実際的な対処を、項目立てしているところです。

例として、
自分のミスは部下のせい、部下の手柄は自分のものにする上司

の項目では、
具体的な事例のを示した後で、【こんな上司についたなら……】として、
「目の前に、まさに失敗の事例があるんだ。勉強になるなあ」と考える
という対策が示されています。 自分が将来そうならないように、いわゆる「反面教師」として役立てるということです。根本的な解決ではないですが、この考え方は応用のきく手だと思います。

また、「俺の手柄だと吹聴してまわる上司」への対策としては、
上司のさらに上役に「今回は上司に手伝っていただいたことで、大変うまくいきました」、と先回りして報告しておく
といった「作戦」が紹介されています。
このように自分の成果をきちんとアピールするのは大切ですが、ただ、こういう「手柄横取り」の場合には、案外周りは本当は誰の手柄かがわかっている場合が多いのではないでしょうか。「最後に正義が勝つ」とも言われていますし。

他にも困った例が紹介されていますが、会社生活が長ければ対策がわかってくる事例もあります。(例えば「細かすぎる上司」の例など)。
そういう意味では、特に会社生活の短い方々には、実用的で具体的な「困った上司」対応マニュアルではないかと思います。


長年の経験から得られることを、読書が提供してくれるということです。従来であれば、メンターとなる人が職場にいたのでしょうが、世知辛い世の中となった今では本に頼るしかないのでしょうか。

2013年4月21日日曜日

「電通「鬼十則」」 植田 正也


電通の当時(昭和26年)社長であった吉田秀雄が、社員のために書いた10カ条が「鬼十則」です。そして、他のビジネス書や歴史書で言われていることを引用しながら著者の解釈を加えているのが本書です。

その鬼十則とは、

1.仕事は自ら「創る」可き(べき)で、与えられる可きでない。
2.仕事とは、先手先手と「働き掛け」ていくことで、受け身でやるものではない。
3.大きな仕事と取り組め、小さな仕事はおのれを小さくする。
4.「難しい仕事」を狙え、そしてこれを成し遂げるところに進歩がある。
5.取り組んだら「放すな」殺されても放すな、目的完遂までは。
6.周囲を「引きずり回せ」、引きずるのと引きずられるのとでは永い間に天地のひらきが出来る。
7.「計画」を持て、長期の計画を持っていれば忍耐と工夫とそして正しい努力と希望が生まれる。
8.「自信」を持て、自信がないから君の仕事には迫力も粘りもそして厚味すらがない。
9.頭は常に「全廻転」、八方に気を配って、一分の隙もあってはならぬ、サービスとはそのようなものだ。
10.「摩擦を怖れるな」、摩擦は進歩の母、積極の肥料だ、でないと君は卑屈未練になる。
となっています。


■「3.大きな仕事と取り組め、小さな仕事はおのれを小さくする」に関しては、大きな仕事に取り組むことこそが人間的に大きくなれるとしており、さらには、人間として大きくなるために、本を読むこと、人に会うこと、旅に出ることの3つを著者は勧めています。
本を読むことについて、
本を読むことは、人間の脳のビタミン剤である。
そして、
本は知識と情報の宝庫である。読む本の量とスケールで、その人の器が決まってくる。
さらには、
時空を超えて著者に会える。何のアポも了解もなく、勝手に著者に会えるのだ。こんな贅沢は他に類がない。
と述べています。本を読むことでその著者に会えるとすると、読書は人(その本の著者)に会うことと解釈できるでしょう。さらに、読書で経験を広げられるとすると、旅にでることの代わりを読書で部分的には実現できると言えます。(実際の旅の体験には及びはしませんが。)


■「5.取り組んだら「放すな」殺されても放すな、目的完遂までは」については、やるかやらないか、やると決めたら最後までやり遂げろという意味です。途中でやめてしまうとスタートラインに戻ってゼロからやり直すことになるから、強い意志をもって、「殺されても放すな」となっているのでしょう。
見方は変わりますが、「途中までやったことが無駄になるから」やめない(やめられない)状況では少し違います。例えば、「投資とリターン」の場合では、これまでの投資が無駄になるから続けて損失を拡大させるよりも、将来にわたって損失が拡大を避けるために、それまでの投資分をあきらめる考えもあるからです。
目的完遂も重要ですが、状況により目的を「修正」する柔軟性も必要に違いありません。


■「9.頭は常に「全廻転」、八方に気を配って、一分の隙もあってはならぬ、サービスとはそのようなものだ」は、「気遣いの重要性」についてです。気遣いについて著者は、
ビジネスマンの一流、二流、三流の差は、気の配り方次第で決まる。三流は一方だけ、二流は四方、一流は八方に気が廻るのだ。
と述べており、この八方が「頭は常に全廻転」のことだと言っています。

気配りとゴマスリの違いについては、以下のように述べています。
気配りには、尊敬の気持ちがある。
ゴマスリには、卑しさの気持ちが出る。
この二つは、似て非なるものだ。
確かに、「ゴマスリ」は打算的なにおいがします。
「サービス」に関係した、外向きの気遣いはもちろんですが、社内においても、部下や上司や同僚に対しても気遣いは必要なのだろうと思います。


■「10.「摩擦を怖れるな」、摩擦は進歩の母、積極の肥料だ、でないと君は卑屈未練になる」では、従来の日本的な「和をもって貴しとなす」、のスタイルではダメで、出る杭になる必要があることを述べています。また、そのときには、単に摩擦ではなく「プラスの」摩擦だとしており、それぞれを以下のように説明しています。

プラスの摩擦
・摩擦が、世のため人のためになる
・信念に基づく

マイナスの摩擦
・猪突猛進
・トラブルメーカーが引き起こす
・信念がない

表現は違いますが、「2」と「6」も、この「10」と同じようなことを言っているように感じます。


個人的には、3、6、10が気に入っています。この鬼十則の英訳もあるようですが、日本語のニュアンスがかなりそぎ落とされた感じになっています。


60年以上前に作られた10カ条ですが、現在でも通用するのは驚きです。
しかし、減点主義という日本社会の枠組みのなかで実現するのは簡単なことではないでしょうね。


2013年4月20日土曜日

「野良犬の成功法則」 堀之内 九一郎

もう放送は終了しましたが、以前、「マネーの虎」というリアリティ番組のレギュラーだったリサイクル会社社長の著作です。その番組は、一般人である起業家が事業計画をプレゼンテーションし、投資家たる審査員らが出資の可否を決定するという内容でした。

著者は、事業家の家に生まれるも、それをうまく継承できず、借金をしてさまざまな事業に手を出しますがついにはホームレスにまでなりました。で、そこから総合リサイクルショップを立ち上げた経歴を持ちます。

■商売人というだけあって、お金に関係したことが多く語られています。「お金を借りる必要もないのにあえて借金してつながりを作っておく」、「お金は使って初めて意味をなすものだ」などです。
また、お金を使う時に、「それが投資なのか浪費なのかをちゃんとわかっていることが必要」と押さえている点はさすがだと感じました。浪費だけでは事業の発展性はないからです。


■「欲望」については肯定的な見方をしています。
未来には大きな可能性があるのではなく、欲望や願望があるだけだ
「際限のない欲望」を持つからこそ、人は人生に挑戦できるのだ 
欲望がなくなったときは、人生が終わるとき
だから、もし事業を起こすとしても最初の段階では、目標を社会への貢献とかいった、他から押し付けられたような動機ではなく、自分の望み(欲望)を実現させるためにがんばるのがよい(例えば、車や家を持つ)といっています。

一口に欲望といっても物質的なものだけではなく、精神的な欲望も含まれるでしょう。


■偶然にも、この前のエントリー(「優しくされる技術」)でも「他人からうまい具合に助けられる必要性」がでていましたが、ここでも似たことが述べられています。
人生で成功する人は、「能力のある人」ではなくて、人に「こいつ、助けてやりたいな」と思わせる人
であり、そして、援護者が現れるためには、限界まで力を出し切る、使い切ることが必要だといってます。がむしゃらにがんばれば、手助けする人間が現れるということでしょうね。


■成功の程度の評価については、
成功とは、自分のやったことが、どれくらい人に影響を与えているかで測るもの
と定義しています。この定義では、単なる物質的なことだけが成功ではないと言えるでしょう。最終的には、人それぞれで「成功」の定義は違ってきて当然だと思います。

また、成功の方程式については、
「(知識+技術)×意欲=実績」
だから、意欲が十分であれば実績を大きくできるといっています。ただ、「意欲」の重要性は理解できますが、それは成功に至るための「最低限の要素」なのではないかと私は思います。「意欲」というか、目的に向かうための強固な「意志」といったほうがよいかもしれません。

「過去は変えられないが、過去の意味づけは変える事ができる」と聞いたことがあります。事業の失敗やホームレス生活の人生のどん底の過去は変わりませんが、いまや成功した事業者として過去をみられるからこそ、成功までの道筋のサクセスストーリーとして語られるわけです。

これまでの成功体験がそのまま適用できるとは限らないので、この手の「成功本」の内容は、自分でよく咀嚼してみる必要があるでしょう。「成功方程式」とは、あくまでも過去の「成功」を説明するための「式」であり、将来の成功に向かって適用できる保証はありません。それでも、こうした「成功経験」を語った本から学べることが多いのも事実です。

2013年4月14日日曜日

「なぜあの人とは話が通じないのか?」  中西 雅之

対人コミュニケーションに関して、実用的な問題対処法のコツに加えて心理学的な理論的な基礎が紹介されています。

非言語コミュニケーションの重要性に関しては、声や顔の表情だけではなく、その人の服装など見た目にも注意を向けるべきだと述べています。ビジネスマンの身だしなみが重要で、さらに靴が重要である点を挙げています。アメリカでは女性が男性を見るときには靴をみて値踏みするらしいと述べられています。似たような話を私も聞いたことがあります。営業マンが信用できるかどうかは、その人の靴を見ればわかると。駅構内の上り下りでスーツを着た男性の靴を注視してみると、たまにひどくくたびれた靴を見かけることがあり、人ごとながら心配になります。

また、初対面では最初の5分間でその人の印象が決定づけられ、その第一印象でその人の評価が決まるので注意が必要と言っています。いわゆる「暗黙の性格観」により、例えば「ハキハキしている」という印象を受け手が感じたら、そこから芋づる式に勝手に良いイメージを受け手が作り上げられるそうです。この場合、興味深いことは、その相手がイメージした性格は、実際の性格を反映しているとは限らないという点でしょう。反対に、初対面の印象で神経質さがイメージされてしまうと、そこから「神経質」→「心が狭い」→「人に話を聞かない」→「身勝手」といった、否定的な評価をされる可能性があるということです。
よく言われる、「人間、中身が大切だ」ということは否定しませんが、中身を磨くことに加えて(あるいはそれ以上に)「見た目」を気にするべきでしょう。このことにもっと早く気づいていれば人生変わっていたかもしれませんが(笑)。

日本人とか外国人という大きな違いだけではなく、世代間や男女間で起こるコミュニケーション不全についても分析しています。その理由として「文化の違い」を挙げており、その文化の違いとは、日本と海外といった大きな文化だけではなく、世代間、男女間でも観察される文化の違いであると述べています。

著者のプロフィールを見ると、「英文学科コミュニケーションコース教授」となっているので、日本と英語圏との文化の違いからの視点の分析が丁寧になされているのは納得のいくところです。



この本では理論と実践が幅広く紹介されていますが、以前に紹介した「不都合な相手と話す技術」のほうが実際的な内容でしょうね。

2013年4月13日土曜日

「人に優しくされる技術」 にらさわあきこ

基本的には何でもすべて自分でやり、できるだけ他人に頼らないのが個人的なポリシーなのですが、結果的には、他人の助けでなんとかやってきたことは否定できません。

この本では、人に頼ることについての長所を以下のように述べています。
人に頼ることは悪いことではない。むしろすべてを自分の力でやろうとするよりも、周囲にうまく頼っていくほうがよいことが多い。
自分のできないことを頼る段階の次は、自分のできることをあえて人に頼ることであり、それによって人を育てることもできるし交流もできる。
また、人からやさしくされる、助けられるためには、「天然ぼけであったり、すこし何かが欠けているくらいがよい」として、以下のような例えを使っています。
人は欠けている点を見せられてこそ、他の人が入ってきてくれる。寿司には新米ではなく古米がよいのと似ている。すなわち、古米はひび割れるほどに乾燥しているために、水分を吸収しやすい。そして、酢がまんべんなく米に行き渡って酢飯としておいしくなる。
完璧と思える人間よりも、少し隙があったほうが好感を持たれやすいことは、テレビタレントを観察していても同様のことが言えるでしょう。


やさしくされるためには、他人に優しくする、助けることが必要で、それは一種の投資のようなものだから、どこからか回収できればよいという考えを示しています。
結局は「優しくされる技術」といってはいますが、人に頼り、同時に頼られることで世の中うまくいくということでしょう。
「感情は循環していないと停滞する」「才能は出していかないと枯れる」といった点は、お金についても似たことをが言われていた気がします。



具体的に「優しくされるための10のヒント」が述べられています。
ほとんど、月並みなものと感じられましたが、一つだけ「ナレーション視点で考える」はおもしろいと感じました。優しくされるためには、「相手の気持ちを読み取ること」が大切で、そのためには「自分の視点を超えて、広い視野で客観的に物事を見ること」が有効であり、そのためには通常の一人称スタイルではなく、「ナレーション原稿のような」日記を書くことを勧めています。
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例えば、こんな感じでしょうか。
【通常の一人称スタイルの日記】
昨夜は、旧友と久しぶりに飲みに出かけ、昔話で盛り上がった。しかし、旧友は忙しくてやつれているようだった。

【ナレーション風の日記】
旧友と飲みに出かけた。
私「久しぶりだな」
旧友「お前も忙しそうだな」
それから二人は昔の話で盛り上がった。
そのうち、近況の「話題へと移った。
私「なんだかげっそりしるようにみえるけど」
旧友「いやー、いろいろストレスが多いんだよ」
旧友はそういいながら、職場や家庭のごたごたを話してくれた。
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世界を客観的あるいは俯瞰的に眺めることで、相手の感情を読みやすくなるのは間違いないでしょう。また、例えば怒りなどのネガティブな感情コントロールの際に自分の感情からも一歩離れてみることが大事なことは、怒る技術で触れました。



もてる人に対する考察で「もてるひとは、そもそももてる人なのだ」と言っています。もてることが天分であることはある面否定できないでしょう。そう考えると、優しくされるあるいは人から可愛がられるのも一種の才能かもしれません。そういえば、努力できるかできないかも「努力する才能」ではないか、といっていたのは五木寛之だったでしょうか。

ちょっとスピリチュアル系ではありますが、人生に「引っ掛かり」を感じた時には何らかのヒントをくれる本です。

2013年4月7日日曜日

「Unspeakably Desirable」 Barbara Morgenroth

テレビキャスターのスキャンダラスな写真が流出したことから、そのキャスターと女性を巡る関係を軸として話が進行します。

この小説は「コメディー」のカテゴリーだった気がするのですが、あまり笑えなかったのは私の語学力の不足が原因でしょう。一応、最後に、サスペンスのオチじみたものがありました。

料理するところの描写が詳しいので、料理好きであればそれらの点を楽しめるでしょう。



このタイトルはおそらくMark Twainの言葉(以下)からの引用だと思われます。
“There is a charm about the forbidden that makes it unspeakably desirable.”
本書で数回は「Unspeakably Desirable」の言葉が会話中で出てきました。

登場人物の名前がこんがらがって、話の展開についていけなくなりました。そのうち時間があれば読み返して、もう少し内容を把握したいです。


「英語ジョークの研究―関連性理論による分析」  東森 勲

英語のジョークの例を挙げて、なぜそれらが「おもしろいのか」を理論的に説明しています。英語だけでなく、日本語のジョークや駄洒落についてもおもしろいと感じられる理由を解析しています。「関連性理論って何?」と、気にはなりますが、「ジョーク参考書」としては比較的新しい本です。値段は安いとは言えませんが、以前本屋に立ち寄った時に目にとまったので購入しました。

英語をそのまま日本語に置き換えてもジョークとして成立するものもありますが、英語でしか成り立ち得ないもの、逆に日本語でしか成り立ちえないもの列挙されています。あとは、そのジョークの文化的背景を知らないとウケナイのはエスニックジョークでしょうか。民族性のステレオタイプに対する認識が同じでないと笑えません。

日本語でなじみがないものといえば、「ノックノックジョーク」でしょうか。
例えば、
Knock, Knock!
Who's there?
Hatch.
Hatch who?
Bless you and please cover your mouth next time.
くしゃみの「archoo」と「Hatch who」の音が似ているからという前提で成り立っています。ジョークというか、なぞなぞに近いです。



メグライアンとトムハンクスが主演の「ユーガットメール」では、トムハンクスとレジの店員の会話のノックノックジョークの場面が出てきますが、未だに「なぜジョークとして成立しているか」がピンときません。

トム knock, knock.
店員 Who's there?
トム Orange.
店員 Orange who?
トムOrange you(Aren't you)going to give us a break by zipping this credit card through the credit card machine?


  ネットで検索すると、Orange who?とAren't youの発音が似ているという解釈が多数派のようですが、他の解釈もあるようです。
なお、日本語字幕は、「orange」については全く触れずにうまくニュアンスを伝えた意訳がなされています。
ジョークを難なく理解できるのは「金メダルレベル」の英語かもしれませんが、そのレベルには近づきたいものです