2013年5月1日水曜日

「パブリックスピーキング―人を動かすコミュニケーション術」 蔭山 洋介

プレゼンの技術について興味がありこの本を買いました。プレゼンよりもスピーチに役立つ内容だと思います。

「パブリックスピーキング」の語訳は「話ことば」ですが、以下のように定義されてます。
普段の話し言葉を使って人前で話すこと、またはその技術
スピーチ、プレゼン、講義も広義のパブリックスピーキングですが、「普段の話し言葉」を使う点が特徴です。だからオバマ大統領のスピーチやスティーブジョブズのプレゼンはこの範疇に入りますが、校長先生の原稿を読む朝礼の講話は含まれません。


パブリックスピーキングの構成要素は「演出」「シナリオ」「演技」の3つです。

「演出」に関しては、他のプレゼンテーション本で書かれていることとあまり変わりません(例えば、会場のライティング、マイクの調整など)。


「シナリオ」については、以下の構成が紹介されています。
あいさつ
アイスブレイキング
フレーミング
事実/事件
意見
まとめ
事件での内容の構成が、ドラマツルギー(作劇法)の手法そのものである点は「なるほど」と思いました。すなわち次の順序のようなドラマの流れです。
日常→事件→非日常→解消→新たな日常
また、自分が追体験するように話せば面白くなると述べています。その時さらに、擬音を入れる、実際の言葉をいれる、語尾表現を「ました」ではなく「たんです」とすることが効果的であると言ってます。
スピーチで話す場合に、AをBのようにすると、話し言葉として生き生きするのがわかります。

A
車を運転していたときです。前方の片側2車線の分離線に黒い何かが落ちていました。そこを避けて通り過ぎる際に見たら子猫のようでした。車を路肩に停めてその子猫を保護しました。自宅に連れて帰りましたが、先住猫は威嚇するし妻は反対するしで困りました。しかし、最終的には職場の猫好き同僚が引き取ってくれました。

B
車を運転していたんですね。で、前方の片側2車線の分離線に黒い何かが落ちていたんです。「タイヤが乗り上げたらいやだな」と思って避けて通ったんです。そのときよく見たら、よろよろして歩いていた子猫だったんです。「他の車にひかれたら大変だ」と思って保護したんですが、うちに連れて帰ると先住の飼い猫は「シャー」って声出して威嚇するし、妻は反対するし困りました。しかし、最終的には職場の猫好き同僚が引き取ってくれたんです。ほっとしました。
(注:なお、この子猫保護の話は実話に基づいた構成です。)


「演技」のコツに関しては、プレゼンの基本と重なる部分もありますが、目新しい点もありました。それは、
感情をこめて話そうとするのではなく、自然に沸き起こる感情を使って話せ
という指摘です。そのためには、
1.大げさに表現することに慣れる
2.感受性を鍛える
「1」の例を考えると、「満天☆青空レストラン」の宮川さんの「うまーーい!」です。彼は番組で食べる料理の味について、「うまーーい!」の一言しか言いませんが、自然な感情として伝わってきます。

「2」は、難しそうですが、具体的な方法として「発見と伝達を繰り返す」ことを勧めています。
例として「笑いの感受性」であれば、日ごろから「何か面白いことはないか?」と考えながら過ごして、面白いことが見つかったら(=発見)、それを身近な人に話してみる(=伝達)方法を示しています。個人的には、好奇心を失わないことも大切だと思います。
また、ひとつの専門分野を極めることも感受性を鍛える上で重要と述べています。身近な例を考えてみると、自分の趣味など特定の分野にのめり込んでいるひとが「熱く語る」状況じゃないかと思います。


パブリックスピーキングの技術は、演劇の技術の応用だとまとめることができます。そう考えると、レーガン大統領やシュワちゃんが政治家に転身できたのもわかる気がします。

上述のAとBを比べると、何だかBのほうは「落語」っぽい印象があります。演劇以外に、落語の技術でもパブリックスピーキングに応用できそうですが、誰か(桂文珍とか)落語家がこの手の本を書いていても不思議ではありませんね。

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