2016年3月6日日曜日

「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」桜庭一樹

 主人公の山田なぎさ(中2)と、転校してきた自称人魚の海野藻屑(小説といえどかなりふざけた名前だが)の2人の女の子の友情物語であり、藻屑が父親に虐待され続けていたという父子虐待の話もありつつ、なぎさと引きこもりの兄友彦の話もある。さらに言えば、なぎさの片思いであった野球部の花名島と、なぎさと、藻屑の三角関係も絡んだストーリーである。冒頭ですでに藻屑が異常な状態の死体で発見されることから、その犯人探しの話でもある(すでに犯人の予想はつくのだが)。
 この小説のタイトルにひかれて読む気になった。「砂糖菓子の弾丸」の概念は、「実弾」と対極にある。タイトルだけだと目的語がほしくなる(「砂糖菓子の弾丸は○○を撃ちぬけない」の○○の部分)が、それがないのは意図したことだろう。しかし、副題(英語のタイトル)では ” Lollypop or A Bullet” となっており、「砂糖菓子の弾丸あるいは実弾」かという意味が表されている。

 友彦が、なぎさから藻屑の虚言ばかりの様子を聞いた後で、
「彼女はさしずめ、あれだね。"砂糖菓子の弾丸"だね」
と言いさらに続けて、
「なぎさが撃ちたいのは実弾だろう?世の中にコミットする、直接的な力、実体のある力だ。」と言っている。そして実弾に対して「空想的弾丸」と表現している。[kindleでは位置No.344]。
 空想的な弾丸を撃ちまくるのは、多感な年頃のティーンエージャーの特質かとも思うのだが、砂糖菓子の弾丸の解釈は読み手に委ねられるだろう。

 異常犯罪者の青少年の精神鑑定に使われる質問を友彦がなぎさに投げかけた件が、後半の犯人探しの伏線となっている。この質問が実際に使われているかの真偽についてはネットで検索しても判明しなかったが、一部のサイトではサイコパスを見抜くための質問のひとつとして挙げられている。ただし科学的なものというよりかは「都市伝説」のレベルなのかもしれない。

小説に対してあれこれと分析してもしょうがないので、読んだヒトがいろいろと感じ、解釈すればそれでいいと思う。一言で青春ものとは言えない小説である。


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